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「会計士の転職」「税理士の転職」を
考えるコラム
仕事の探し方と働き方

会計士の転職先・転職市場動向

日本の公認会計士は試験合格者を含めて約4万人です。その約40%がBIG4、約5%が中小監査法人で働いています。また、2018年12月時点の組織内会計士は1,745名と約5%です。半数の会計士は、それ以外の働き方をしているということです。会計士のキャリアは十人十色。本コラムでは、個性的な会計士の「生き方」に触れていきます。

公認会計士の転職市場の動向と公認会計士の転職について

公認会計士の転職市場の動向と公認会計士の転職について
公認会計士として転職を考えたときに、「公認会計士の転職市場は盛り上がっているのだろうか」「今の経験を高く評価してくれるところがあるだろうか」と心配になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事では、公認会計士の転職市場の動向と、公認会計士の転職先にはどんなところがあるのかをご紹介します。

今後転職を考えている、あるいは現在転職活動中という方は、ぜひ参考にしてみてください。


■公認会計士の主な転職先とその特徴




公認会計士の独占業務である監査のイメージから、転職先として監査法人を思い浮かべる人も多いでしょう。

しかし、変化が激しく先の見えない現在は、独占業務だけではなく幅広い業界で、公認会計士の能力が求められるようになっています。

変化の大きな時代では、生き残っていくためにどのような財務戦略を取るべきかと考える企業が増え、買収を行って新たな価値提供を行おうとする企業も出てきます。前者には財務コンサルティング、後者はM&Aコンサルティングを求めるため、財務やM&Aのコンサルティング企業も人材の確保に力を入れるようになるでしょう。

また、監査や財務などの専門的な経験を積むことで、事業会社でのCFO、財務、経理などの職種に転職することも可能です。このように、活躍の場が幅広くなってきている公認会計士が転職する際に候補に挙げること多い法人や事務所の特徴をご紹介します。


■公認会計士の転職先となる法人・事務所の特徴




・監査法人
まずは公認会計士の独占業務でもある、監査業務をメインにした仕事をしている監査法人です。監査法人といっても、規模によっては監査業務以外に国内外の税務・移転価格・トランザクション、ファイナンシャルなどのアドバイザリー業務などを担当することもあります。

BIG4と呼ばれる大手監査法人の場合は、その他にもM&A、IPO、ベンチャー支援、グローバルサービス、IFRS、IT、マネジメントコンサルティング、コンプライアンス・リスクマネジメント・コーポレートガバナンスやデータ分析など、多岐に渡る業務を担当しています。

過去の経験に応じて転職できる領域は絞られますが、第二新卒程度の年齢であれば、ポテンシャルで広い領域にチャレンジできる可能性があるでしょう。

・会計事務所、税理士法人
会計事務所も税理士法人も、主に税務申告関連の仕事を行っています。ただ、税理士登録をしていない公認会計士は、税理士の独占業務である税務代理や税務相談ができないので、それ以外の業務を担当することになりますので注意しましょう。大手・中堅税理士法人の業務は、コンサル色が強く、国際税務、M&A、相続・事業承継などの専門分野に強みをもっています。

事務所が小規模なのか、中規模なのかによって業務内容が変わるため、事業内容をよく見ておくようにしてください。大きくなっていくにつれて、経営コンサルティングなどの付随業務が増えていく傾向にあります。

・財務会計系コンサルティングファーム
公認会計士としての経験を生かし、決算業務を正確に行いながらどのように効率化するかという業務提案などを行います。他にも、クライアントが製造業であれば、仕入れ・製造・販売などの他部署の計画と連動して業績やコスト把握を行うシステム導入を課題解決の手法として提案する、あるいはコスト削減の提案など、会計にまつわるさまざまな企業の悩みを解決していくのが、財務会計系コンサルティングファームの特徴です。

これまで税務に携わってクライアントと接していた会計士の場合は、会計コンサルタントとして担当する際にもクライアントが置かれている状況を想像しやすいです。そのため、転職先候補の企業にも経験をアピールしやすくなるでしょう。

・M&A専門コンサルティングファーム、仲介会社
M&A専門のコンサルティングファームや、M&Aの仲介会社などに転職した場合、M&Aアドバイザリー経験がない公認会計士は会計の知識を持つものとして、財務デューデリジェンスを担当することが多いです。

財務デューデリジェンスは、買収前に企業の資産価値を正しく把握しておき、買収後の事業継続が難しくなるようなリスクを排除するために行うものです。具体的には決算書のチェック、事業計画の確認、財務会計の実態把握、借り入れ状況の把握などを行います。

例えば、買収後に大幅な借り入れがあったことが発覚し、買収金額が非常に大きくキャッシュがショートしてしまうなどがあれば、買収した企業側が倒産してしまいます。こうしたリスクを把握せずに買収することのないよう、専門家として実態の把握を行い、適切な買収金額の検討に役立ててもらうという仕事です。

・事業会社(CFO、財務、経理など)
事業会社に転職すると考えた場合、経理・財務などこれまでの公認会計士としての経験を生かした職種への転職ができます。専門家としての経験に加えて、マネジメントの経験もあれば、皆をまとめる立場に立つ、部門を統括する立場での転職可能性も上がります。

IPO支援やM&A、マーケティング、財務アドバイザリー、マネジメントなどを網羅的に経験していれば、財務・経理系のトップであるCFOに転職できる可能性があります。ただし、長年大手監査法人で働いていたとしても、監査だけやっていた場合は実際の資金調達や銀行との交渉、財務戦略の策定、投資家へのプレゼンなどができないため、転職は難しいでしょう。

また、CFOの場合は監査法人やコンサルティングファームで働く場合とは異なり、経営陣として最終責任を負う立場です。主に資金調達・財務戦略に関してすべて自分で責任を持って行い、チームをマネジメントしながら対応していく必要があります。

複数の能力を結集して働くことができる点はチャレンジングで惹かれる方も多いかもしれませんが、かかるプレッシャーも大きいため、プレッシャーをバネに働けるタイプでなければ、キャリアを再考する必要が出てくるかもしれません。

いずれの転職先に行くとしても、そこで必要となる能力を事前に経験していなければ、公認会計士の肩書きがあっても転職が厳しくなることは頭に入れておきましょう。


■公認会計士の求人動向に関して




公認会計士の独占業務である「監査」は不況だからと勝手に辞められるものではないので、顧問先からの依頼がなくなることは考えにくいです。しかし、コンサルティングなどの業務を依頼してくれていたクライアントが業績不振になり、コンサルティング業務の継続がなくなることは考えられます。

逆に業績が悪くなったタイミングでM&Aが活況になるというケースもあるので、どこに力を入れているかによって、その法人・事務所や業界ごとの影響範囲は異なるでしょう。

そのため世の中の状況から、どういった業界・法人・事務所が盛り上がってくるのかを考察したうえで、タイミングを逃さずに転職するようにしましょう。

では、具体的に公認会計士の求人動向についてご紹介します。公認会計士の求人を検索すると、未経験者も歓迎する案件が多数掲載されており、転職しやすい状況であることが見て取れます。

企業が変化の激しい時代で生き残っていくためには、複雑化する監査業務を依頼する必要もありますし、M&Aなども含めた経営戦略を考えていくこと、会計システムの導入による業務効率化など、さまざまなことに取り組む必要があります。

企業がこうした「攻め」の経営戦略を取るためには、公認会計士としての専門性や、専門性をベースにしたコンサルティング業務が求められる時代になってきているということです。つまり、これからは公認会計士の活躍できる場所がより増えていく可能性が高いといえるでしょう。

公認会計士試験の出願数を見てみると、平成27年以降は右肩上がりで増えています。新型コロナウイルス感染の影響が大きく出た令和2年度も、令和元年度の出願数を超えました。長期的に見ても、公認会計士の需要は伸びてきていると捉えていいでしょう。

出典:公認会計士・監査審査会ウェブサイト 「過去の試験結果等」
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/kakoshiken.html


■転職前に知っておきたい、公認会計士転職の心構え




公認会計士の求人市場は新型コロナウイルスの影響があるものの、現時点では好調で、活躍できるフィールドも広がってきています。しかし、以前のように公認会計士であれば簡単に転職が可能ということではなく、募集している領域でどのようなスキルを積んできたのかを見て判断されるようになっています。

そのため、キャリアプランをしっかり立てておき、必要な経験を戦略通りに身につけていけるように、転職すべき年齢やタイミングを計算しておくことが重要です。

20代のうちはまだポテンシャルを見てくれる可能性がありますが、30代になってくると監査からM&Aなど、未経験の領域への挑戦を転職で実現するのは厳しくなります。そのため、目の前の業務に集中するだけでなく、長期スパンのキャリアを眺める俯瞰の目を持っておくことが重要です。

そして、これらの時代で転職するときには「どこが自分の経験を高く評価してくれるのか」、「その中でも今のライフスタイルを維持できる職場はどこか?」を見分ける力がより求められてきます。

見分ける力をつけるためには、下記ステップで自分のキャリアを考えることが重要です。

1. 自分の目指すキャリアを設定、必要スキルの洗い出しを行う
2. 転職できる年齢とスキルがたまるタイミングを計算する
3. 毎年、自己分析・経験の棚卸し・業界や法人に対する研究を行う
4. 3を受けて、翌年どのような改善をするか、考えて実行する

自分の目指すキャリアが製造業のCFOということであれば、製造業の商習慣・CFOに必要な財務の実務把握・戦略策定、IPO支援経験、マネジメントの経験、移転価格の実務、その他にできればビジネスレベルの英語とM&A知識などを備えておく必要があります。

2の転職できる年齢を考え、自分が今持っていないスキルはどうすれば身につけられるのか、どういった順番でどこに転職すればいいのか、その転職先が求める人材像に当てはまるキャリアの描き方を考えましょう。

そして転職した後も次の転職に向けて、毎年の自己分析・経験の棚卸し・業界や法人の研究を行い、改善・実行するというサイクルを意識してください。

特に最終目的がCFOなど手に入れるスキルが多い場合は、最初に戦略を立てておかなければ実現が難しくなります。本当に実現したいのであれば、現在地から転職先を考えるのではなく、最終地点から現在地を逆算して必要スキルが身につく転職先を選びましょう。

このように自分のキャリアプランを改めて考え、ひとつひとつ実行するようにすれば、自分が思い描くキャリアを実現できるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

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