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「会計士の転職」「税理士の転職」を
考えるコラム
仕事の探し方と働き方

会計士の転職先・転職市場動向

日本の公認会計士は試験合格者を含めて約4万人です。その約40%がBIG4、約5%が中小監査法人で働いています。また、2018年12月時点の組織内会計士は1,745名と約5%です。半数の会計士は、それ以外の働き方をしているということです。会計士のキャリアは十人十色。本コラムでは、個性的な会計士の「生き方」に触れていきます。

DX化で会計はどう変わるのか?

DX化で会計はどう変わるのか?
■ DXとは

 
「DX」とはDigital Transformationのことをいいます。アルファベットのXというのは二文字目のトランスフォメーションのことをいい、情報などが.交差していく様を表しています。経済産業省ではDXのことを以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
 
つまりはITの革新的な活用による新たな価値創造を行い、企業の市場競争力の維持・強化させるために.経営を革新することをいいます。これを促進するため、日本の行政庁において平成21年9月1日、デジタル庁が発足し、さまざまな取り組みが進められています。

これに伴い帳票の電子化・ペーパーレス化に伴い、請求書が電子化されるなど、いままで当然に紙媒体で行われていた業務が電子化され、利便性が向上することが期待される反面、改ざんや偽造・責任の明確化の面で課題があるといわれています。


■ 会計がどう変わるのか


以前から会計の分野では業務のパッケージ化が進み、今まで手作業で行っていた業務がデジタル化される傾向はありました。しかしこのデジタライゼーションとDXの違いとして、利益追求型の効率化だけでなくITの革新的活用により企業が新たな価値を生み出し存続成長に向かうという「変革」という言葉に表されます。そもそもTransformationという言葉は「変化する」という意味があり、それに伴いビジネスパーソンの意識変化が必要であるといえます。

これからの会計においては、いままでの大規模なカスタムアプリケーションシステム環境の維持開発に金銭や時間や人員を投資することではなく、進化するITにキャッチアップしていき、スマートフォンやタブレットをはじめとした文明の利器を使いこなし、ITへの理解のある人材として会計と向き合う必要があるのです。


■ 経理業務への影響


これからの経理に求められるのは、経営環境に変化が激しい中、パッケージソフトにありがちな仕様に縛られて定式化された経営課題対処ではありません。必要なのは、ITの発達により新しいテクノロジーに応じた変革という言葉に代表される、「自動化と意思決定力の強化」を掲げた経理システムです。クラウド会計やITの恩恵を満たした「環境」、さらには、このコロナ禍でのニューノーマルといわれる「働き方改革」に代表される、場所を選ばない業務の推進というのも今後経理業務を行う上での指針になるはずです。

また、CFOの役割も、経営判断にあたり、サプライチェーン・研究開発・製造・マーケティング・販売・顧客対応といった一連の流れを俯瞰し、的確な財務戦略を指揮する立場として、会計業務基盤システムの構築や戦略的な人員配置戦略、IT組織運用を目指すことになるでしょう。


■ 監査業務への影響


以前より会計帳票のペーパーレス化やクラウド会計により監査の態様は変わってきていました。これに続き、デジタル社会形成基本法に基づき、次の二つが施策として掲げられました。

① 主に押印を求める手続きについてその押印を不要とする。 
② 書面の交付等を求める手続について電磁的方法により行う。

公認会計士法も法律改正が行われ、上記に伴い、今まで監査報告書として「自著押印」が義務付けられていたものが「署名」の義務に代わり、電子形式の監査報告書と電子署名によることができるようになりました。

また、話は前後しますが、会計という仕組みそのものがデジタルトラストといったインターネット空間での情報のやり取りで行われます。

ここでは、(A)電子署名、(B)eシール、(C)タイムスタンプ、という概念を理解しましょう。

(A) 電子署名
公開鍵暗号方式により、電子文書が署名者本人により作成され、改変等が行われていないことを確かめる技術である。

(B) eシール
公開鍵暗号方式により、電子文書が署名組織等により作成され、改変等が行われていないことを確かめる技術である。eシールと電子署名の違いは、検証の対象となる作成者が法人等の組織の場合はeシールであり、個人の場合は電子署名である点にある。

(C) タイムスタンプ
 公開鍵暗号方式を利用して、タイムスタンプとして付された時点でその電子文書が存在し、その後改変されていないことを証明する仕組みである。


■ 税理士業務への影響


東欧の国であるエストニアでは、行政手続きが99%デジタル化されており、デジタル先進国と呼ばれています。日々のサービスだけでなく、給与の受け取りから代金の決済までほぼこれで済んでしまい、税金の申告さらには支払いまで完結されており、極言すれば税理士の関与する部分がかなり減っているといえます。日本の10年後を行っているともいわれており将来の可能性を感じます。

ですので、DXの推進は身近な税理士業務へのインパクトも当然あります。以前よりの潮流ですが、企業の日々の取引の記録を任せる記帳代行に関して、パッケージソフトの利用による自計化からさらに進んで、財務管理や経営戦略までを体系化した業務フローの確立により、税理士へ依頼する作業が減ってきていく可能性があります。

 
 また、これまで紙媒体で保存していた情報の文書管理ソフトなどによるネット保存による情報共有や、パソコン上の作業のロボット化による単純作業の効率化、チャットやウェブ会議システムの導入によるタイムリーな情報共有で実現される在宅ワーク、クラウド型の会計ソフトによる銀行口座やクレジットカード情報との連動が仕訳や記帳作業をスムーズに行うといった現象への対尾いうがなどが今後の税理士業務への課題となるでしょう。


 そんななか、税理士の存在意義を考えると、単なるアウトソーシングや税務申告だけでなく、DXの思考を取り入れ、「社外財務部長」的な企業の経営に密着した業務フローを提案管理するコントロールタワー的な役割が期待されているところです。

 DXの推進は業務の根本的な変革に基づくフローの最適化であり、IT技術を駆使した改善の思考を基にしたものですが、なによりビジネスパーソンの意識変革が重要です。

 いま、社会では「2025年の崖」と呼ばれているものがあります。これは経済産業省が「DXレポート」で警告しているもので、将来のIT人材不測の深刻化を表しています。今までの経理システムのまま莫大なコストと投資、このままの現状の維持では進化するITの恩恵を得られず、企業成長の足かせとなることが危惧されています。2025年までにDXに取組み、問題解決に至らなければ、以降の5年間に、日本経済全体の損失が年間最大12兆円にも達するといわれています。

 このような現状の中、新たな企業価値創造を目的とした変革ができる企業が生き残っていくのは想像に難くありません。そのためにはトップを中心としたマネジメント層だけの問題ではなく、各ビジネスパーソンのIT技術の理解を伴った意識改革が必要であり、既存の方法に拘泥することなく変化を受け入れる柔軟な思考こそ求められているのです。

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