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「会計士の転職」「税理士の転職」を
考えるコラム仕事の探し方と働き方
考えるコラム仕事の探し方と働き方
会計士の転職先・転職市場動向
日本の公認会計士は試験合格者を含めて約4万人です。その約40%がBIG4、約5%が中小監査法人で働いています。また、2018年12月時点の組織内会計士は1,745名と約5%です。半数の会計士は、それ以外の働き方をしているということです。会計士のキャリアは十人十色。本コラムでは、個性的な会計士の「生き方」に触れていきます。
公認会計士の転職 転職先の特徴&選び方のポイント 2022年版
公認会計士として2~3年働いていると、現状の仕事環境について考える方も多いのではないでしょうか。せっかく公認会計士になったわけですから、その資格を活かして自分のやりたい仕事や理想の働き方、待遇があるところに転職したいと考えるのは当然です。
そこで本記事では、公認会計士の転職先とその特徴、選び方のポイントを徹底解説します。理想のワークライフを実現するために、今の職場でどういったスキルを身につけたほうがいいのか、あるいは今後のキャリアプランについて悩んでいる方は、参考にしてください。
日本公認会計士協会ホームページに載っている公認会計士の人数を比べてみると、公認会計士の会員は増加傾向になっています。監査法人の中で減っている地域はなく、とくに東京では161人(2020年12月31日時点)→173人(2021年11月30日時点)と、会員数がその他の地域と比較して増加人数が多いです。このことから、東京の監査法人では公認会計士採用のニーズが高まっていることがわかります。
公認会計士試験の最終合格者は、平成30年~令和3年度まで1300人台で推移しています。ですが、多数の合格者が出た2007~2008年の2600~3000人台という水準には至っていません。その後、監査法人でのリストラが相次いだ、2011~2012年とその影響を受けた翌年の2013年は、公認会計士試験の受験者数が大幅に減りました。合格者も2011年は1400人台・2012年には1300人台・2013年は1100人台と減少の一途をたどりました。
さらに、2015~2016年には1000人台となりましたが、2017年から1100人台、2018年には1200人台と徐々に上がり、ここ数年の1300人台まで回復してきました。しかし、監査法人でも短答式試験合格者・未経験者から募集をする求人が多く出ていることから見ても、現状はリストラの影響で人員減少した状況を解消できていない、人手不足のである可能性が高いです。
これらの情報を総合すると、しばらくの間は公認会計士としての転職はしやすい市場動向だといえます。
出典:日本公認会計士協会ホームページ 「概要/会員数」
出典:公認会計士・監査審査会ホームページ 「過去の試験結果等」
では次に、公認会計士の転職先とその特徴をご紹介します。今の職場から転職するならどのような能力が必要になりそうか、どのようなキャリアを歩めばその職種で働くことができそうかを考えると、明確にキャリアプランをつくることができます。
※本記事では、税理士の登録申請を行っている公認会計士を前提に、仕事内容を書いています。もし税理士登録申請を行っていない場合は、税理士の独占業務である税務代理、税務書類作成、税務相談などは行えませんので注意してください。
①BIG4監査法人
BIG4監査法人は、公認会計士の独占業務である財務書類の監査や財務書類の内容証明以外に、アドバイザリー業務も幅広く行う大手監査法人です。業務内容は大きく分けて、監査・コンサルティング・税務・戦略の4つになります。
監査領域では、監査・保証以外に、監査のデジタル化を推進する財務会計アドバイザリー、不正・不祥事などがあった際のリスク対応、レピュテーションの回復支援なども入ってきます。
税務領域では、タックスプランニング、税務コンプライアンス、IFRSアドバイザリーなどです。戦略には、IPO・M&Aアドバイザリー、コーポレート・ファイナンス・インフラストラクチャーに対するコンサルティングなども含まれています。
コンサルティング領域では、ファイナンスからサプライチェーン、オペレーションの他にもエンタープライズリスク・テクノロジーリスクなどビジネス面でのコンサルティングです。その他にも、テクノロジー・人材・海外展開に関するコンサルティングなどが含まれています。
各監査法人によって分け方や名称は異なりますが、このような事業をあらゆる産業に対して行っているのが、BIG4監査法人です。
BIG4の場合は、それぞれ税理士法人を持っています。税務に関しては監査法人と税理士法人でどう棲み分けているのかはよく確認した上で、転職先としての検討をするようにしてください。
■特徴
スタートアップから大手企業まで、そして監査・税務・コンサルティング・戦略という事業内容の幅広さがあるため、社内だけでさまざまなキャリア展開が考えられるという点が魅力です。監査の繁忙期などは非常に忙しいですが、閑散期にしっかり長期休暇はとれます。年中ずっと忙しいという形ではなく、メリハリのある働き方が可能です。
報酬に関しては、スタッフのときは中小の監査法人と大差ない場合もありますが、シニア・マネージャー・シニアマネージャー(※ジュニアスタッフ・スタッフ・シニアスタッフなど呼称は法人ごとに異なります)と上がっていくと差が開いていく傾向にあります。
そのため、昇進していけば高い報酬水準を保つことが可能です。ただ、転職をする際に監査業務だけの経験しか持っていないと、年齢によっては行ける転職先が限られることもあります。そのため、大手監査法人在職中にアドバイザリー業務を経験しておくと、その後のキャリアプランにも幅が生まれるでしょう。
■仕事の特徴
大手監査法人の業務を大きく分けると、監査・税務とアドバイザリーに分けられます。
・監査業務
大手監査法人での監査業務は、数十名程度のチームで行われます。固定のチームではなくプロジェクト形式でチームが作られるので、終わったら次はAチーム、次はBチームと所属するチームはバラバラに分かれます。マネージャーは必要なタイミングで監査に表れるという程度で、普段接するのはスタッフ・シニアまでというのが特徴です。
日本企業の場合は上場企業で規模が大きいため、4,5月が忙しく、有価証券報告書の作成が仕事に含まれます。ただ、外資系企業担当の場合は非上場企業が多く、日本企業に比べて規模も小さいため、有価証券報告書の作成を必要としない傾向があります。
そのため、監査に関わる人数も少なく、期間も数週間で終わることが多いです。ただ、勘定科目から業務フローの記述に至るまで英語で表記する必要があるため、英語力が求められます。
どちらの担当になるかで、大きく働き方や仕事の内容も変わってきますので、事前に把握しておき、転職先にふさわしいかどうかを判断するようにしてください。
・税務業務
監査法人系で行う税務業務は、先にも申し上げた通り上場企業が多いため、税務顧問として税務検討やデューデリジェンスをすることが多いです。税務検討の内容としては、タックスヘイブン対策税制、製造業なら移転価格対策、税務意見書作成などがあります。
・アドバイザリー業務
先にご紹介したように監査からビジネス、リスク管理などさまざまなアドバイザリーを行っています。BIG4以外の監査法人や会計事務所では、取り扱っていないようなアドバイザリー業務も多いため、転職するのであれば最初からアドバイザリー業務に入る難易度は高い傾向にあります。
1. 監査のデジタル化を推進する財務会計アドバイザリー
2. 不正・不祥事などがあった際のリスク対応、レピュテーションの回復支援
3. タックスプランニング
4. 税務コンプライアンス
5. IFRSアドバイザリー
6. IPO・M&Aアドバイザリー
7. コーポレート・ファイナンス・インフラストラクチャーに対するコンサルティング
8. ファイナンス
9. サプライチェーン
10. オペレーション
11. エンタープライズリスク・テクノロジーリスクなどビジネス面でのコンサルティング
12. テクノロジー・人材・海外展開に関するコンサルティング
BIG4監査法人のなかにも、アドバイザリーは未経験でも募集している場合があるので、まずはその募集要項に当てはまるかを確認してください。あまり当てはまなければ監査業務を足がかりに、アドバイザリー業務への異動を目指すことをおすすめします。
②大手会計事務所
大手会計事務所の特徴と仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
その企業の顧客に大手企業が多いか、中小が多いかによって仕事内容が大きく変わるというのが大前提です。大手~中小企業を担当し、会計業務・税務サービス・コンサルティング業務などを行っています。外資系企業、国際展開をしている企業が多い事務所の場合は、移転価格などを扱うことも多いです。報酬の水準も高く、福利厚生・育成にも投資する姿勢があり、安定して働ける転職先といえます。
■仕事の特徴
・監査業務
その事務所の取引相手に大手企業が多ければ、監査業務が多くなる傾向にあります。義務付けられているのは、資本金5億円以上、もしくは負債金額が200億円以上の企業、また指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社が対象です。大きい企業の場合は自社で文書を作成しているため、そのレビューがメインですが、作っていない企業はこちらで作成が必要になります。
・会計、税務業務
四半期・年次などの顧客決算資料の作成、レポートの提供、税務顧問、相続税・贈与税関連などが仕事です。大手と中小どちらのシェアが高いかによって、業務の割合が異なってきます。事務所の得意分野を参考に、業務シェアの予想を立てておきましょう。
・アドバイザリー業務
その事務所の大手・中小比率によって異なりますが、大手企業が多い場合はアドバイザリー業務の業務比率が増加します。IPO・M&A・税務コンプライアンス・IFRSアドバイザリーから、会社で避けるべきリスクに関するアドバイザリーなども行います。中小企業の場合は、経営方針資金調達や助成金などの資金繰りに加えて、人事労務、相続税・贈与税対応など経営に関する幅広い相談を受けることが多いです。
③中小会計事務所
大手会計事務所の特徴と仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
中小の会計事務所は、中小企業や個人が顧客となります。そのため、中小企業ではまかないきれない経理業務を代行する場合や、個人の記帳業務などを請け負うことが多いです。顧客が作成した資料のレビューなどがメインになる、監査法人や大手会計事務所とは異なり、細かな会計状況を把握しているため、会社にまつわる相談をまとめてお願いされることが多い傾向にあります。
報酬は大手よりも下がってしまう場合もありますが、顧客を身近に感じられ、その企業のことであれば制限がなく相談に乗れるという特徴が魅力です。ただ、担当する顧客やその事務所のDXが進んでいるかどうかによって、作業と経営相談などの比率が変わってくる可能性があります。ギャップなく働くためにも、業務の比率は先に確認しておくと安心です。
■仕事の特徴
・会計、経理業務の代行
中小の会計事務所になってくると、監査を任意でやっている企業も少ないです。基本的には、顧客決算資料の作成・レポートの提供・経理業務の代行にプラスして、多岐にわたる相談を受けることが多くなります。
・経営相談
経営に関する相談はもちろん、相続税・贈与税や事業承継などに関しても相談に乗ることが多いです。地域によっては、首都圏よりも高齢化が進んでいて事業承継が急務になっていることもあるため、相続税・贈与税や事業承継、M&Aアドバイザリーの経験があると重宝されます。
➃事業会社
事業会社の特徴と仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
事業会社は、その規模や業種によって仕事が大きく異なりますが、基本的に会計の専門家という位置づけで採用されることが多いです。そのため、幅広く細かな仕事が要求されると考えておいたほうが良いです。どの範囲までを業務範囲として先方が捉えているのかは経営者や人事の面接では把握できないため、現場の方との面談も希望しておくことをおすすめします。
■仕事の特徴
事業会社の規模と業種によって大きく異なりますが、募集されることのある職種の特徴をご紹介します。企業規模によっては異なりますが、下記の必要能力を確認して実際の募集内容と見比べてどの程度の能力が求められるかの判断に使ってください。
・CFO
ファイナンス戦略の立案・資金調達・資金繰り・事業計画策定、ステークホルダー対応、経理業務の統括・IPO準備・会計事務所との連携など多くの業務経験が必要です。そのため、金融業界出身の方もしくは会計出身で資金調達のアドバイザリーを経験している方、IPOアドバイザリーを行っていた方などを対象に、CFOを任せたいというオファーが来る可能性もあります。公募でもCFO・CFO候補の募集が出ているため、そこで探してみて必須要件を満たしているかどうかを確認してみてください。
・経営企画
事業計画策定・予算策定・事業PL/KPIの予実モニタリング・ステークホルダー対応・IPO準備などさまざまな経験が必要になるため、CFO候補に準じた能力が必要です。
・内部監査部
内部監査文書化・決算/業務/IT等の全社統制と評価・不備改善のモニタリング・関連法令遵守/規定マニュアル運用・監査法人とのやりとりなどが業務です。監査業務全般と運用方法を知らないと対応できないため、監査の指揮経験が必須となります。
・財務
債権回収・回収業務プロセス整備・資金効率の向上・ファイナンス検討・財務会計業務・決算業務・J-SOX対応・監査対応などが仕事です。監査業務とファイナンスアドバイザリー業務の経験があれば全般をカバーできます。また、海外展開をしている企業の場合は、英語の会計文書を読むことも多いため高い英語力が求められます。
・経理
経理業務は公認会計士試験をクリアしているので問題ありませんが、監査や上場企業での経理経験が必要とされる場合もあります。これも企業規模やポストによって必要スキルが異なりますので、募集要項を読み、どこまでの能力が求められているのかを見極めてください。
⑤PEファンド
PEファンドの特徴、仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
PEファンドは安定期の企業に対する投資をし、Exitによってリターンを得るビジネスモデルです。そのため、VCに比べてローリスクな事業形態が特徴です。投資先が安定期の企業であるため、まずは財務モデリングやバリュエーションのスキルが必須になります。そのため、転職してくる人も投資銀行や大手証券出身者、PE出身者などが多く、いわゆる金融業界が多い傾向です。
監査法人でFAS(M&A業務に関わるデューデリジェンス、バリュエーションなどのアドバイザリー業務)を経験した、あるいは監査法人系列のFAS出身という方は財務・会計知識が豊富なため、投資銀行やPEファンドの業務になじみやすいといえます。
・監査法人は「守り」がメインの事業であること
・PEファンドは「投資」という色がある業態であること
・業務範囲が広く、学び続ければそのPEファンドの成長が促進されること
上記を総合すると、少々アクティブなアピールが好印象を与えやすいでしょう。
■仕事の特徴
PEファンドは企業へ投資をし、Exitをしてリターンを得るというビジネスです。そのため、正しく財務状況を把握しモデリングできる能力、デューデリジェンス能力、IPOアドバイザリー経験、そして組織再編税制の知識が求められます。
非常に幅広く深い知識を求められるため、BIG4監査法人のグループ会社のFASに入ってM&Aアドバイザリー(デューデリジェンス、バリュエーション)を学び、その後、投資銀行でM&Aアドバイザリー業務を担当すると転職に成功しやすいでしょう。もちろんFASからPEファンドへという道もありますが、より確実な道を取るのであれば投資銀行経由での転職をおすすめします。
⑥投資銀行
投資銀行の特徴、仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
投資銀行は、企業の資金調達やM&A、有価証券発行などをサポートするビジネスです。企業が資金調達やM&Aを行う際は、有価証券の発行や株式の売買が必要です。しかし、自社で全てを行うことは難しいため、そのサポート役として投資銀行が存在しています。
働き方の特徴としては、非常に大規模な資金調達やM&Aのサポートをするため残業が非常に多く、タフな現場です。報酬はその分高く、アソシエイトクラスでも1000万円+業績連動ボーナスを超える報酬が得られます。
■仕事の特徴
財務デューデリジェンス・バリュエーション・財務分析/モデリングなどはFASと変わりませんが、資金調達を含めた買収スキーム提案をすること、大規模なプロジェクトを担当できる点が投資銀行の特徴です。また、採用者に帰国子女・ネイティブが多いため、母国語レベルの英語力を求められます。
⑦コンサルティングファーム(FAS・戦略など)
コンサルティングファームの特徴、仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
会計士の転職先として考えられるコンサルティングファームは、FASか戦略コンサルであることが多いです。いずれも高い報酬を得られる傾向にあります。
※この記事では、投資銀行やPEファンドはコンサル外としています。
■仕事の特徴
・FASファーム
財務デューデリジェンス・バリュエーション・PMI(M&A後の統合作業)・PPA(買収時の取得原価配分)/減損テスト(減損兆候と測定)・不正調査・事業再生・IFRS・IT・内部統制などの業務内容があります。
この中で、監査法人のFASで経験できる業務は一部分です。つまり、FASコンサルに行くと、さらに広範なスキルを身につけることができます。ただ、自分がやりたい業務を本当に担当できるかは、確認しておきましょう。
・戦略系ファーム
戦略系ファームでは、顧客の売上増加、利益増加などを主として経営課題の解決が仕事となります。つまり、会計以外に経営に関する専門的な知識が必要です。業種やその企業によって異なることを把握した上で、経営陣に対して売上増加、利益が増加する方法を伝えることが重要です。
仕事内容としては常駐型のコンサルティング、経営陣へのアドバイザリー、ビジネスデューデリジェンスがあります。例えば監査や会計しか行ってこなかった方が転職した場合は、市場調査をした上でその企業がどういった戦略を取るべきかというマーケットを見る力・戦略の妥当性はもちろん、コンサルティングでフィーをいただくため、プレゼンテーションスキルを磨くことが重要です。
BIG4監査法人への転職事例としては、会計・税理士事務所、中堅監査法人からの転職事例が多いです。監査法人は監査業務とその他のアドバイザリー業務に二分されますが、どちらも実務経験がないと転職は難しいかもしれません。
なぜ難しいかというと、BIG4監査法人とそれ以外の監査法人の取引先が、大きく異なるためです。BIG4監査法人以外の監査法人出身の場合、大規模な案件や国際的な案件の経験が少ない傾向にあります。特にBIG4の監査基準は非常に厳しく、他監査法人とは大きく方針が異なり、BIG4監査法人の経験がないと分からないことも多いためです。
また、アドバイザリーについても規模や海外進出の度合いが異なると、あまり経験が活かせない可能性も高いです。日本の大手企業を担当したことがあっても、外資系企業の経験がない、あるいは海外進出をしている企業の担当をしたことがない場合は、未経験に近い状態から仕事をスタートすることになります。
そういった理由から、他監査法人での経験はあまり評価されない可能性が考えられます。もちろん年齢が若ければポテンシャルで採用されることもありますが、30代半ばなどで経験が浅い場合は、BIG4監査法人の本社ではなく、別拠点の事務所などを検討すると良いでしょう。さらに別職種でもマネジメントの経験などがあれば、その部分をピックアップして伝えるのも良い方法です。
また、BIG4では確実に英語力が求められるため、アピールできる資格や試験を用意しておきましょう。仮に業務で英語力を証明できるような経験がない場合でも、USCPA試験の科目合格をしておくことで、専門性にプラスして英語力をアピールできます。
実際の転職事例では、新卒の時代に監査法人の求人が非常に少なく、入所が叶わなかった方が大手の事業会社に経理職として入社。決算や税務業務に関わっていく中で公認会計士資格の必要性を感じて資格を取得した後に、BIG4への転職を叶えたという例があります。
採用は監査業務でも、監査で経験を積んでからはアドバイザリー業務のほうにもチャレンジしたいと考えている意欲、そして事業会社側で経理として長く仕事をしてきたことが評価され、採用が決定することもあります。
他にもBIG4ではない大手監査法人から、未経験の領域にも関わらず、BIG4監査法人のM&Aアドバイザリー部門への転職を叶えた方もいます。20代で若いということとポテンシャル、必要な英語力の強化やM&Aアドバイザリー業務への強い意欲、自主的な勉強を行っていたことなどが評価されて転職を成功させることができました。
このように年齢や経験、そして意欲とその理由などをお話しすることで、一般的には難しいといわれるような転職が叶うケースもあります。また、その法人ごとにアピールするポイントや逆にアピールを抑えて、事実のみを語るほうが良いなどの傾向もあるため、エージェントなど第三者の冷静な意見を活かして転職活動をすることも重要です。
事業会社への転職では、監査の経験を活かして内部監査部門へ。あるいは会計知識を活かして財務や経理、経営アドバイザリーなどの経験を活かして経営企画部への転職など、さまざまな道があります。
公認会計士が事業会社へ転職する場合、基本的には専門家としての知識や、他メンバーを巻き込む・教育するような体系だった組織運営を行う役回りを求められることも多いです。
内部監査部門は監査法人とのやり取りがあるため、監査法人出身の方が採用されやすいです。監査法人側として事業会社と関わった経験があれば、そのポジションで求められることも想像がつくでしょう。
また、財務や経理は公認会計士知識を活かして対応できますし、中堅監査法人や会計事務所などに勤めていれば実務で担当したこともあるため、そのまま業務をスライドするイメージで転職ができます。
特に多く担当していた業界であれば、業界としての特徴などを捉えて対応できるため、高く評価される可能性が高いです。経営アドバイザリーの経験でも長く担当してきた業種であれば、商習慣を理解した提案ができる経営企画部として採用された事例があります。
転職する年齢にもよりますが、専門家であるということから、どうしても部署をまとめるマネジメント職として迎えたいという企業も多いです。そのため、マネジメントを希望しない方からすると、事業会社への転職難易度は非常に高いといえるでしょう。
エージェントとしてサポートする際には、マネジメント職をやりたくない理由が、働き方・自信のなさのどちらかを明確にし、それに合わせて求職者や相手企業への働きかけを行います。
自信がない方であれば、入社当時は一般社員として入社し、慣れてきてマネジメントができると本人が実感できたらマネジメントを任せるという方法をとりますし、働き方の面で不安があるようであれば、相手先企業に業務量が偏らないような調整方法を行ってもらうなどの働きかけをして不安を払拭します。
市場に求められる役割と、求職者自身が担いたい役割は必ずしも合致しません。その方の長所をしっかり活かして働いていただける職場を探して入社してもらうためにも、この観点は必要です。
事業会社への転職の場合、一般的には自分が事業会社の中でどのような分野を担いたいかを決めて転職活動を行いますが、キャリアプランが決まっていない中でも転職がうまくいく場合もあります。成長途中で自分が希望を出せば柔軟に受け入れてくれる企業に転職をすれば、既に経験のある経理業務を行いながら、やっていく中で経営に興味が出てきた領域にジョブチェンジできます。
経理を通じて、会社経営にもっと関わりたいと考えるようになったら、管理会計から経営企画へ。M&Aなどに関わりたくなったら、M&A推進室あるいは経営企画へ。経理を突き詰めていき、財務担当からCFOを目指すなど、同じ会社の中でもさまざまな道があります。
その際にも経理としてスタートして、数字の動きを見てきたからこそ分かること、言えることが出てくるため、社歴が長くなればなるほど提案にも深みが出てくるはずです。もし、将来の方向性が決まっていない中で転職をするのであれば、自由度の高い企業へ転職すると、キャリアプランにも広がりが出てくるでしょう。
コンサルティングファームへの転職は、大手監査法人でのアドバイザリー・コンサルティング経験がある方がほとんどです。
大手監査法人で働いている方は、クライアントとの距離が遠いという理由で今よりも小さなコンサルティングファームへの転職を希望されるケースがあります。他にも部門ごとに分かれていることの多い、M&A・事業再生をまとめて担当しているコンサルティングファームで働きたいというケースや、財務会計を突き詰めたいと専門コンサルティングファームに転職されるケースなどがあります。
実際に大手監査法人で事業再生のアドバイザリーを行っていた方が、今よりも小規模で動きやすく、M&Aや事業再生を専門に行っているコンサルティングファームで働きたいと考え、事業再生やM&Aに強いコンサルティングファームに転職された事例もあります。
専門性を磨きたいという段階に来た転職希望者は、ある程度年齢を重ねてきているため、働き方についても重視される傾向です。実際の求職者の方の中でも、ご家庭とのバランスがとりやすい勤務先を希望している方はいます。激務というイメージが強いコンサルティング業界の中でも、働きやすく家庭とのバランスもとりやすい企業をご紹介することは可能です。
また、大手監査法人で働かれていた方が、大手企業へのアドバイザリーで大きなスケールの仕事ができることは嬉しいけれど、もっと地域に根ざした企業に対してあらゆるサポートを行うことで、地元を応援したいという考えを持って転職された事例もあります。
この方は、大学から上京して大手監査法人で経営アドバイザリー業務を担当していたけれども、地元に戻って働きたいと考えていた方だったため、子どもが生まれたタイミングで地元へ戻ることを決意されました。生まれ育った地元を応援したいという気持ちも強かったため、地元の小規模で経営関連から会計まで、さまざまな相談を一手に引き受けているコンサルティングファームを紹介したところ、双方のニーズが合致して転職が決まりました。
財務会計を突き詰めたいと考え、専門コンサルティングファームへの転職を叶えた方もいます。大手監査法人で監査業務をしていたけれど、今後はコンサルティングで攻めの経営をサポートしたいと考えるようになったため、常駐型のコンサルティングファームをご紹介しました。
大手監査法人での経験や人柄、コミュニケーション能力を高く評価され、未経験にも関わらず、コンサルタントとしての転職に成功されたという事例もあります。
その方の「経験」「これからのやりたいこと」「希望する働き方」などによって、選ぶべき転職先は大きく異なります。自分のキャリアプランが決まっていない、あるいはキャリアプランは決まっていても企業選びの優先順位が決められないという場合は、第三者であるエージェントをうまく利用して転職活動を行うのも良い方法です。
公認会計士・税理士の転職サポートに特化しているエージェントであれば、その監査法人や事務所がその求職者の希望と合致するかどうか、パートナーと求職者の相性や募集時期を見定めた転職時期の提案など、一般的な転職活動では手に入れることのできない情報を提供できます。
転職をしたいけれど、具体的にどう動いて良いか分からない、迷ってしまって決まらないという方は、一度TACキャリアエージェントへご相談にいらしてください。棚卸しから転職先の選定、アピール方法に至るまで、徹底的にサポートいたします。
そこで本記事では、公認会計士の転職先とその特徴、選び方のポイントを徹底解説します。理想のワークライフを実現するために、今の職場でどういったスキルを身につけたほうがいいのか、あるいは今後のキャリアプランについて悩んでいる方は、参考にしてください。
■■ 公認会計士の求人市場動向
日本公認会計士協会ホームページに載っている公認会計士の人数を比べてみると、公認会計士の会員は増加傾向になっています。監査法人の中で減っている地域はなく、とくに東京では161人(2020年12月31日時点)→173人(2021年11月30日時点)と、会員数がその他の地域と比較して増加人数が多いです。このことから、東京の監査法人では公認会計士採用のニーズが高まっていることがわかります。
公認会計士試験の最終合格者は、平成30年~令和3年度まで1300人台で推移しています。ですが、多数の合格者が出た2007~2008年の2600~3000人台という水準には至っていません。その後、監査法人でのリストラが相次いだ、2011~2012年とその影響を受けた翌年の2013年は、公認会計士試験の受験者数が大幅に減りました。合格者も2011年は1400人台・2012年には1300人台・2013年は1100人台と減少の一途をたどりました。
さらに、2015~2016年には1000人台となりましたが、2017年から1100人台、2018年には1200人台と徐々に上がり、ここ数年の1300人台まで回復してきました。しかし、監査法人でも短答式試験合格者・未経験者から募集をする求人が多く出ていることから見ても、現状はリストラの影響で人員減少した状況を解消できていない、人手不足のである可能性が高いです。
これらの情報を総合すると、しばらくの間は公認会計士としての転職はしやすい市場動向だといえます。
出典:日本公認会計士協会ホームページ 「概要/会員数」
出典:公認会計士・監査審査会ホームページ 「過去の試験結果等」
■■ 公認会計士の転職先や特徴
では次に、公認会計士の転職先とその特徴をご紹介します。今の職場から転職するならどのような能力が必要になりそうか、どのようなキャリアを歩めばその職種で働くことができそうかを考えると、明確にキャリアプランをつくることができます。
※本記事では、税理士の登録申請を行っている公認会計士を前提に、仕事内容を書いています。もし税理士登録申請を行っていない場合は、税理士の独占業務である税務代理、税務書類作成、税務相談などは行えませんので注意してください。
①BIG4監査法人
BIG4監査法人は、公認会計士の独占業務である財務書類の監査や財務書類の内容証明以外に、アドバイザリー業務も幅広く行う大手監査法人です。業務内容は大きく分けて、監査・コンサルティング・税務・戦略の4つになります。
監査領域では、監査・保証以外に、監査のデジタル化を推進する財務会計アドバイザリー、不正・不祥事などがあった際のリスク対応、レピュテーションの回復支援なども入ってきます。
税務領域では、タックスプランニング、税務コンプライアンス、IFRSアドバイザリーなどです。戦略には、IPO・M&Aアドバイザリー、コーポレート・ファイナンス・インフラストラクチャーに対するコンサルティングなども含まれています。
コンサルティング領域では、ファイナンスからサプライチェーン、オペレーションの他にもエンタープライズリスク・テクノロジーリスクなどビジネス面でのコンサルティングです。その他にも、テクノロジー・人材・海外展開に関するコンサルティングなどが含まれています。
各監査法人によって分け方や名称は異なりますが、このような事業をあらゆる産業に対して行っているのが、BIG4監査法人です。
BIG4の場合は、それぞれ税理士法人を持っています。税務に関しては監査法人と税理士法人でどう棲み分けているのかはよく確認した上で、転職先としての検討をするようにしてください。
■特徴
スタートアップから大手企業まで、そして監査・税務・コンサルティング・戦略という事業内容の幅広さがあるため、社内だけでさまざまなキャリア展開が考えられるという点が魅力です。監査の繁忙期などは非常に忙しいですが、閑散期にしっかり長期休暇はとれます。年中ずっと忙しいという形ではなく、メリハリのある働き方が可能です。
報酬に関しては、スタッフのときは中小の監査法人と大差ない場合もありますが、シニア・マネージャー・シニアマネージャー(※ジュニアスタッフ・スタッフ・シニアスタッフなど呼称は法人ごとに異なります)と上がっていくと差が開いていく傾向にあります。
そのため、昇進していけば高い報酬水準を保つことが可能です。ただ、転職をする際に監査業務だけの経験しか持っていないと、年齢によっては行ける転職先が限られることもあります。そのため、大手監査法人在職中にアドバイザリー業務を経験しておくと、その後のキャリアプランにも幅が生まれるでしょう。
■仕事の特徴
大手監査法人の業務を大きく分けると、監査・税務とアドバイザリーに分けられます。
・監査業務
大手監査法人での監査業務は、数十名程度のチームで行われます。固定のチームではなくプロジェクト形式でチームが作られるので、終わったら次はAチーム、次はBチームと所属するチームはバラバラに分かれます。マネージャーは必要なタイミングで監査に表れるという程度で、普段接するのはスタッフ・シニアまでというのが特徴です。
日本企業の場合は上場企業で規模が大きいため、4,5月が忙しく、有価証券報告書の作成が仕事に含まれます。ただ、外資系企業担当の場合は非上場企業が多く、日本企業に比べて規模も小さいため、有価証券報告書の作成を必要としない傾向があります。
そのため、監査に関わる人数も少なく、期間も数週間で終わることが多いです。ただ、勘定科目から業務フローの記述に至るまで英語で表記する必要があるため、英語力が求められます。
どちらの担当になるかで、大きく働き方や仕事の内容も変わってきますので、事前に把握しておき、転職先にふさわしいかどうかを判断するようにしてください。
・税務業務
監査法人系で行う税務業務は、先にも申し上げた通り上場企業が多いため、税務顧問として税務検討やデューデリジェンスをすることが多いです。税務検討の内容としては、タックスヘイブン対策税制、製造業なら移転価格対策、税務意見書作成などがあります。
・アドバイザリー業務
先にご紹介したように監査からビジネス、リスク管理などさまざまなアドバイザリーを行っています。BIG4以外の監査法人や会計事務所では、取り扱っていないようなアドバイザリー業務も多いため、転職するのであれば最初からアドバイザリー業務に入る難易度は高い傾向にあります。
1. 監査のデジタル化を推進する財務会計アドバイザリー
2. 不正・不祥事などがあった際のリスク対応、レピュテーションの回復支援
3. タックスプランニング
4. 税務コンプライアンス
5. IFRSアドバイザリー
6. IPO・M&Aアドバイザリー
7. コーポレート・ファイナンス・インフラストラクチャーに対するコンサルティング
8. ファイナンス
9. サプライチェーン
10. オペレーション
11. エンタープライズリスク・テクノロジーリスクなどビジネス面でのコンサルティング
12. テクノロジー・人材・海外展開に関するコンサルティング
BIG4監査法人のなかにも、アドバイザリーは未経験でも募集している場合があるので、まずはその募集要項に当てはまるかを確認してください。あまり当てはまなければ監査業務を足がかりに、アドバイザリー業務への異動を目指すことをおすすめします。
②大手会計事務所
大手会計事務所の特徴と仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
その企業の顧客に大手企業が多いか、中小が多いかによって仕事内容が大きく変わるというのが大前提です。大手~中小企業を担当し、会計業務・税務サービス・コンサルティング業務などを行っています。外資系企業、国際展開をしている企業が多い事務所の場合は、移転価格などを扱うことも多いです。報酬の水準も高く、福利厚生・育成にも投資する姿勢があり、安定して働ける転職先といえます。
■仕事の特徴
・監査業務
その事務所の取引相手に大手企業が多ければ、監査業務が多くなる傾向にあります。義務付けられているのは、資本金5億円以上、もしくは負債金額が200億円以上の企業、また指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社が対象です。大きい企業の場合は自社で文書を作成しているため、そのレビューがメインですが、作っていない企業はこちらで作成が必要になります。
・会計、税務業務
四半期・年次などの顧客決算資料の作成、レポートの提供、税務顧問、相続税・贈与税関連などが仕事です。大手と中小どちらのシェアが高いかによって、業務の割合が異なってきます。事務所の得意分野を参考に、業務シェアの予想を立てておきましょう。
・アドバイザリー業務
その事務所の大手・中小比率によって異なりますが、大手企業が多い場合はアドバイザリー業務の業務比率が増加します。IPO・M&A・税務コンプライアンス・IFRSアドバイザリーから、会社で避けるべきリスクに関するアドバイザリーなども行います。中小企業の場合は、経営方針資金調達や助成金などの資金繰りに加えて、人事労務、相続税・贈与税対応など経営に関する幅広い相談を受けることが多いです。
③中小会計事務所
大手会計事務所の特徴と仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
中小の会計事務所は、中小企業や個人が顧客となります。そのため、中小企業ではまかないきれない経理業務を代行する場合や、個人の記帳業務などを請け負うことが多いです。顧客が作成した資料のレビューなどがメインになる、監査法人や大手会計事務所とは異なり、細かな会計状況を把握しているため、会社にまつわる相談をまとめてお願いされることが多い傾向にあります。
報酬は大手よりも下がってしまう場合もありますが、顧客を身近に感じられ、その企業のことであれば制限がなく相談に乗れるという特徴が魅力です。ただ、担当する顧客やその事務所のDXが進んでいるかどうかによって、作業と経営相談などの比率が変わってくる可能性があります。ギャップなく働くためにも、業務の比率は先に確認しておくと安心です。
■仕事の特徴
・会計、経理業務の代行
中小の会計事務所になってくると、監査を任意でやっている企業も少ないです。基本的には、顧客決算資料の作成・レポートの提供・経理業務の代行にプラスして、多岐にわたる相談を受けることが多くなります。
・経営相談
経営に関する相談はもちろん、相続税・贈与税や事業承継などに関しても相談に乗ることが多いです。地域によっては、首都圏よりも高齢化が進んでいて事業承継が急務になっていることもあるため、相続税・贈与税や事業承継、M&Aアドバイザリーの経験があると重宝されます。
➃事業会社
事業会社の特徴と仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
事業会社は、その規模や業種によって仕事が大きく異なりますが、基本的に会計の専門家という位置づけで採用されることが多いです。そのため、幅広く細かな仕事が要求されると考えておいたほうが良いです。どの範囲までを業務範囲として先方が捉えているのかは経営者や人事の面接では把握できないため、現場の方との面談も希望しておくことをおすすめします。
■仕事の特徴
事業会社の規模と業種によって大きく異なりますが、募集されることのある職種の特徴をご紹介します。企業規模によっては異なりますが、下記の必要能力を確認して実際の募集内容と見比べてどの程度の能力が求められるかの判断に使ってください。
・CFO
ファイナンス戦略の立案・資金調達・資金繰り・事業計画策定、ステークホルダー対応、経理業務の統括・IPO準備・会計事務所との連携など多くの業務経験が必要です。そのため、金融業界出身の方もしくは会計出身で資金調達のアドバイザリーを経験している方、IPOアドバイザリーを行っていた方などを対象に、CFOを任せたいというオファーが来る可能性もあります。公募でもCFO・CFO候補の募集が出ているため、そこで探してみて必須要件を満たしているかどうかを確認してみてください。
・経営企画
事業計画策定・予算策定・事業PL/KPIの予実モニタリング・ステークホルダー対応・IPO準備などさまざまな経験が必要になるため、CFO候補に準じた能力が必要です。
・内部監査部
内部監査文書化・決算/業務/IT等の全社統制と評価・不備改善のモニタリング・関連法令遵守/規定マニュアル運用・監査法人とのやりとりなどが業務です。監査業務全般と運用方法を知らないと対応できないため、監査の指揮経験が必須となります。
・財務
債権回収・回収業務プロセス整備・資金効率の向上・ファイナンス検討・財務会計業務・決算業務・J-SOX対応・監査対応などが仕事です。監査業務とファイナンスアドバイザリー業務の経験があれば全般をカバーできます。また、海外展開をしている企業の場合は、英語の会計文書を読むことも多いため高い英語力が求められます。
・経理
経理業務は公認会計士試験をクリアしているので問題ありませんが、監査や上場企業での経理経験が必要とされる場合もあります。これも企業規模やポストによって必要スキルが異なりますので、募集要項を読み、どこまでの能力が求められているのかを見極めてください。
⑤PEファンド
PEファンドの特徴、仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
PEファンドは安定期の企業に対する投資をし、Exitによってリターンを得るビジネスモデルです。そのため、VCに比べてローリスクな事業形態が特徴です。投資先が安定期の企業であるため、まずは財務モデリングやバリュエーションのスキルが必須になります。そのため、転職してくる人も投資銀行や大手証券出身者、PE出身者などが多く、いわゆる金融業界が多い傾向です。
監査法人でFAS(M&A業務に関わるデューデリジェンス、バリュエーションなどのアドバイザリー業務)を経験した、あるいは監査法人系列のFAS出身という方は財務・会計知識が豊富なため、投資銀行やPEファンドの業務になじみやすいといえます。
・監査法人は「守り」がメインの事業であること
・PEファンドは「投資」という色がある業態であること
・業務範囲が広く、学び続ければそのPEファンドの成長が促進されること
上記を総合すると、少々アクティブなアピールが好印象を与えやすいでしょう。
■仕事の特徴
PEファンドは企業へ投資をし、Exitをしてリターンを得るというビジネスです。そのため、正しく財務状況を把握しモデリングできる能力、デューデリジェンス能力、IPOアドバイザリー経験、そして組織再編税制の知識が求められます。
非常に幅広く深い知識を求められるため、BIG4監査法人のグループ会社のFASに入ってM&Aアドバイザリー(デューデリジェンス、バリュエーション)を学び、その後、投資銀行でM&Aアドバイザリー業務を担当すると転職に成功しやすいでしょう。もちろんFASからPEファンドへという道もありますが、より確実な道を取るのであれば投資銀行経由での転職をおすすめします。
⑥投資銀行
投資銀行の特徴、仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
投資銀行は、企業の資金調達やM&A、有価証券発行などをサポートするビジネスです。企業が資金調達やM&Aを行う際は、有価証券の発行や株式の売買が必要です。しかし、自社で全てを行うことは難しいため、そのサポート役として投資銀行が存在しています。
働き方の特徴としては、非常に大規模な資金調達やM&Aのサポートをするため残業が非常に多く、タフな現場です。報酬はその分高く、アソシエイトクラスでも1000万円+業績連動ボーナスを超える報酬が得られます。
■仕事の特徴
財務デューデリジェンス・バリュエーション・財務分析/モデリングなどはFASと変わりませんが、資金調達を含めた買収スキーム提案をすること、大規模なプロジェクトを担当できる点が投資銀行の特徴です。また、採用者に帰国子女・ネイティブが多いため、母国語レベルの英語力を求められます。
⑦コンサルティングファーム(FAS・戦略など)
コンサルティングファームの特徴、仕事の特徴をご紹介します。
■特徴
会計士の転職先として考えられるコンサルティングファームは、FASか戦略コンサルであることが多いです。いずれも高い報酬を得られる傾向にあります。
※この記事では、投資銀行やPEファンドはコンサル外としています。
■仕事の特徴
・FASファーム
財務デューデリジェンス・バリュエーション・PMI(M&A後の統合作業)・PPA(買収時の取得原価配分)/減損テスト(減損兆候と測定)・不正調査・事業再生・IFRS・IT・内部統制などの業務内容があります。
この中で、監査法人のFASで経験できる業務は一部分です。つまり、FASコンサルに行くと、さらに広範なスキルを身につけることができます。ただ、自分がやりたい業務を本当に担当できるかは、確認しておきましょう。
・戦略系ファーム
戦略系ファームでは、顧客の売上増加、利益増加などを主として経営課題の解決が仕事となります。つまり、会計以外に経営に関する専門的な知識が必要です。業種やその企業によって異なることを把握した上で、経営陣に対して売上増加、利益が増加する方法を伝えることが重要です。
仕事内容としては常駐型のコンサルティング、経営陣へのアドバイザリー、ビジネスデューデリジェンスがあります。例えば監査や会計しか行ってこなかった方が転職した場合は、市場調査をした上でその企業がどういった戦略を取るべきかというマーケットを見る力・戦略の妥当性はもちろん、コンサルティングでフィーをいただくため、プレゼンテーションスキルを磨くことが重要です。
■■ BIG4監査法人への転職事例
BIG4監査法人への転職事例としては、会計・税理士事務所、中堅監査法人からの転職事例が多いです。監査法人は監査業務とその他のアドバイザリー業務に二分されますが、どちらも実務経験がないと転職は難しいかもしれません。
なぜ難しいかというと、BIG4監査法人とそれ以外の監査法人の取引先が、大きく異なるためです。BIG4監査法人以外の監査法人出身の場合、大規模な案件や国際的な案件の経験が少ない傾向にあります。特にBIG4の監査基準は非常に厳しく、他監査法人とは大きく方針が異なり、BIG4監査法人の経験がないと分からないことも多いためです。
また、アドバイザリーについても規模や海外進出の度合いが異なると、あまり経験が活かせない可能性も高いです。日本の大手企業を担当したことがあっても、外資系企業の経験がない、あるいは海外進出をしている企業の担当をしたことがない場合は、未経験に近い状態から仕事をスタートすることになります。
そういった理由から、他監査法人での経験はあまり評価されない可能性が考えられます。もちろん年齢が若ければポテンシャルで採用されることもありますが、30代半ばなどで経験が浅い場合は、BIG4監査法人の本社ではなく、別拠点の事務所などを検討すると良いでしょう。さらに別職種でもマネジメントの経験などがあれば、その部分をピックアップして伝えるのも良い方法です。
また、BIG4では確実に英語力が求められるため、アピールできる資格や試験を用意しておきましょう。仮に業務で英語力を証明できるような経験がない場合でも、USCPA試験の科目合格をしておくことで、専門性にプラスして英語力をアピールできます。
実際の転職事例では、新卒の時代に監査法人の求人が非常に少なく、入所が叶わなかった方が大手の事業会社に経理職として入社。決算や税務業務に関わっていく中で公認会計士資格の必要性を感じて資格を取得した後に、BIG4への転職を叶えたという例があります。
採用は監査業務でも、監査で経験を積んでからはアドバイザリー業務のほうにもチャレンジしたいと考えている意欲、そして事業会社側で経理として長く仕事をしてきたことが評価され、採用が決定することもあります。
他にもBIG4ではない大手監査法人から、未経験の領域にも関わらず、BIG4監査法人のM&Aアドバイザリー部門への転職を叶えた方もいます。20代で若いということとポテンシャル、必要な英語力の強化やM&Aアドバイザリー業務への強い意欲、自主的な勉強を行っていたことなどが評価されて転職を成功させることができました。
このように年齢や経験、そして意欲とその理由などをお話しすることで、一般的には難しいといわれるような転職が叶うケースもあります。また、その法人ごとにアピールするポイントや逆にアピールを抑えて、事実のみを語るほうが良いなどの傾向もあるため、エージェントなど第三者の冷静な意見を活かして転職活動をすることも重要です。
■■ 事業会社への転職事例
事業会社への転職では、監査の経験を活かして内部監査部門へ。あるいは会計知識を活かして財務や経理、経営アドバイザリーなどの経験を活かして経営企画部への転職など、さまざまな道があります。
公認会計士が事業会社へ転職する場合、基本的には専門家としての知識や、他メンバーを巻き込む・教育するような体系だった組織運営を行う役回りを求められることも多いです。
内部監査部門は監査法人とのやり取りがあるため、監査法人出身の方が採用されやすいです。監査法人側として事業会社と関わった経験があれば、そのポジションで求められることも想像がつくでしょう。
また、財務や経理は公認会計士知識を活かして対応できますし、中堅監査法人や会計事務所などに勤めていれば実務で担当したこともあるため、そのまま業務をスライドするイメージで転職ができます。
特に多く担当していた業界であれば、業界としての特徴などを捉えて対応できるため、高く評価される可能性が高いです。経営アドバイザリーの経験でも長く担当してきた業種であれば、商習慣を理解した提案ができる経営企画部として採用された事例があります。
転職する年齢にもよりますが、専門家であるということから、どうしても部署をまとめるマネジメント職として迎えたいという企業も多いです。そのため、マネジメントを希望しない方からすると、事業会社への転職難易度は非常に高いといえるでしょう。
エージェントとしてサポートする際には、マネジメント職をやりたくない理由が、働き方・自信のなさのどちらかを明確にし、それに合わせて求職者や相手企業への働きかけを行います。
自信がない方であれば、入社当時は一般社員として入社し、慣れてきてマネジメントができると本人が実感できたらマネジメントを任せるという方法をとりますし、働き方の面で不安があるようであれば、相手先企業に業務量が偏らないような調整方法を行ってもらうなどの働きかけをして不安を払拭します。
市場に求められる役割と、求職者自身が担いたい役割は必ずしも合致しません。その方の長所をしっかり活かして働いていただける職場を探して入社してもらうためにも、この観点は必要です。
事業会社への転職の場合、一般的には自分が事業会社の中でどのような分野を担いたいかを決めて転職活動を行いますが、キャリアプランが決まっていない中でも転職がうまくいく場合もあります。成長途中で自分が希望を出せば柔軟に受け入れてくれる企業に転職をすれば、既に経験のある経理業務を行いながら、やっていく中で経営に興味が出てきた領域にジョブチェンジできます。
経理を通じて、会社経営にもっと関わりたいと考えるようになったら、管理会計から経営企画へ。M&Aなどに関わりたくなったら、M&A推進室あるいは経営企画へ。経理を突き詰めていき、財務担当からCFOを目指すなど、同じ会社の中でもさまざまな道があります。
その際にも経理としてスタートして、数字の動きを見てきたからこそ分かること、言えることが出てくるため、社歴が長くなればなるほど提案にも深みが出てくるはずです。もし、将来の方向性が決まっていない中で転職をするのであれば、自由度の高い企業へ転職すると、キャリアプランにも広がりが出てくるでしょう。
■■ コンサルティングファームへの転職事例
コンサルティングファームへの転職は、大手監査法人でのアドバイザリー・コンサルティング経験がある方がほとんどです。
大手監査法人で働いている方は、クライアントとの距離が遠いという理由で今よりも小さなコンサルティングファームへの転職を希望されるケースがあります。他にも部門ごとに分かれていることの多い、M&A・事業再生をまとめて担当しているコンサルティングファームで働きたいというケースや、財務会計を突き詰めたいと専門コンサルティングファームに転職されるケースなどがあります。
実際に大手監査法人で事業再生のアドバイザリーを行っていた方が、今よりも小規模で動きやすく、M&Aや事業再生を専門に行っているコンサルティングファームで働きたいと考え、事業再生やM&Aに強いコンサルティングファームに転職された事例もあります。
専門性を磨きたいという段階に来た転職希望者は、ある程度年齢を重ねてきているため、働き方についても重視される傾向です。実際の求職者の方の中でも、ご家庭とのバランスがとりやすい勤務先を希望している方はいます。激務というイメージが強いコンサルティング業界の中でも、働きやすく家庭とのバランスもとりやすい企業をご紹介することは可能です。
また、大手監査法人で働かれていた方が、大手企業へのアドバイザリーで大きなスケールの仕事ができることは嬉しいけれど、もっと地域に根ざした企業に対してあらゆるサポートを行うことで、地元を応援したいという考えを持って転職された事例もあります。
この方は、大学から上京して大手監査法人で経営アドバイザリー業務を担当していたけれども、地元に戻って働きたいと考えていた方だったため、子どもが生まれたタイミングで地元へ戻ることを決意されました。生まれ育った地元を応援したいという気持ちも強かったため、地元の小規模で経営関連から会計まで、さまざまな相談を一手に引き受けているコンサルティングファームを紹介したところ、双方のニーズが合致して転職が決まりました。
財務会計を突き詰めたいと考え、専門コンサルティングファームへの転職を叶えた方もいます。大手監査法人で監査業務をしていたけれど、今後はコンサルティングで攻めの経営をサポートしたいと考えるようになったため、常駐型のコンサルティングファームをご紹介しました。
大手監査法人での経験や人柄、コミュニケーション能力を高く評価され、未経験にも関わらず、コンサルタントとしての転職に成功されたという事例もあります。
その方の「経験」「これからのやりたいこと」「希望する働き方」などによって、選ぶべき転職先は大きく異なります。自分のキャリアプランが決まっていない、あるいはキャリアプランは決まっていても企業選びの優先順位が決められないという場合は、第三者であるエージェントをうまく利用して転職活動を行うのも良い方法です。
■■ まとめ
公認会計士・税理士の転職サポートに特化しているエージェントであれば、その監査法人や事務所がその求職者の希望と合致するかどうか、パートナーと求職者の相性や募集時期を見定めた転職時期の提案など、一般的な転職活動では手に入れることのできない情報を提供できます。
転職をしたいけれど、具体的にどう動いて良いか分からない、迷ってしまって決まらないという方は、一度TACキャリアエージェントへご相談にいらしてください。棚卸しから転職先の選定、アピール方法に至るまで、徹底的にサポートいたします。
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