心から信頼できるトーマツの
会計士仲間と独立開業
代表取締役 西田 経雄さん


軽い気持ちでTACの公認会計士講座に申し込んだ
父が商社勤務だった影響で、幼少期は6歳までをメキシコ、小学校4年生から中学2年生までをブラジルで過ごしました。治安の悪い国でしたので、日本人は安全エリアで生活する必要があり、マンションの敷地内でしか遊んでいなかったことを覚えています。中学3年生になる前に帰国して、埼玉県の進学校から早稲田大学商学部へ。大学では何の目標もなく、毎日をダラダラと過ごしていくうちに「このままではマズい」と漠然とした不安を抱くようになっていきます。そんな私はキャンパスでTACのチラシを目にし、軽い気持ちで会計士講座へ通うことになったのです。甘い気持ちの私が合格できるはずもなく、結局、大学を卒業してから本気で勉強を開始。2005年に論文式試験に合格することができました。
大手監査法人を経て事業会社へ転職する
公認会計士試験に合格した私が就職先に選んだのは、トーマツ監査法人(現有限責任監査法人トーマツ)でした。多業種の監査をしてみたかった私は、国内事業部で大手から中小規模の製造業を中心に担当しました。初めは先輩の見様見真似で業務を行い、新人ながらにクライアントから「先生」と言われることに違和感を覚えつつ、本当にこれで社会人としての一歩を進めているのか不安でした。ただ、当時はJ-SOXが導入されたばかりの時期であり、クライアントを交えお互いにとって初めてとなる資料を四苦八苦しながら夜中まで協力して作成したことで、初めて仕事の達成感や充実感を感じたことを覚えております。
転職を意識したのは、監査法人の7年目頃でしょうか。今考えると生意気ですが、監査業務は一巡経験することができたと思ったのです。入社8年目の2013年、私は大手非鉄金属へ転職しました。転職理由は「財務諸表を見る側から作る側になりたかった」「監査経験がある製造業で働きたかった」「海外で働けるチャンスがある会社にいきたかった」の3つです。
転職して最初の数か月は経理部で月次決算や監査法人対応を担当しました。入社して3か月後、資源事業本部へ異動となりましたが、ここで自分の「力不足」を痛感します。大企業の中で公認会計士に求められるスキルは部署によって異なり、いわゆるフロントオフィスでは、業界に関係するIFRSやUS基準を含む幅広い会計知識、M&A関連のドューデリジェンス、バリュエーションといったコンサルティング関連業務で、それらの知識は「当然知っているよね?」と期待されるわけです。残念ながら、私は組織内で求められている水準に達していなかったのです。私は尻込みするように1年半で2回目の転職を決意しました。
トーマツ監査法人へ出戻り入社し金融監査を担当
次の仕事に迷った私は、トーマツ時代のパートナーに相談したところ「違う環境で監査をやってみないか?おもしろいステージを用意してやる」と心強いお言葉をいただき、2014年にトーマツ有限責任監査法人へ出戻りをすることになりました。なんと未経験の金融業界の監査チームの「主任」としてチームに配属されたのです。
最初はクライアントとチームメンバーの知識に追いつくことができず、毎日必死になって勉強しました。まだ、若かったこともあり長時間働くことが出来ましたが、丁度子供を授かった時期と重なっており、今でも妻からは「あの頃はひどかった・・・」と責められるほど仕事に没頭しておりました。その時期に仕事に集中させてくれたことは今でも本当に感謝しております。できないなりに努力を継続していくうちに、クライアントやチームメンバーからの信頼を得ることができましたが、ビッククライアントであったが故に様々な難問が生じ、チームとクライアントの協力のもと対応に追われる日々を私なりに一所懸命過ごしておりました。今思えば、本当に大変であったものの非常に充実した、もっとも仕事が楽しいと感じていた時期だったと思います。当時のクライアントの部長からは、後に独立する際に御祝いの宴席まで設けていただきましたし、今でも定期的に連絡を取らせていただいております。監査という仕事を通じて、クライアントと本当の信頼関係を構築できたと今でも実感しています。
トーマツに戻ってから9年間、ビッククライアントを担当しながら、シニアマネージャーに昇格して数年経過した頃、海外勤務を打診されました。パートナーになるために通過すべき道だったと思います。しかし、当時はコロナ真っ只中。小学校低学年だった子供を残して単身で海外へ赴任するという選択はできませんでした。監査法人内での経験よりも家族との時間を選んだ私は、会計士としての最終的なキャリアを「独立」に見据えました。
信頼できるパートナーと共に会社を立ち上げる
最初に独立を考えた時は正直不安でした。監査法人時代は本当によく働いていましたので「人間らしい生活を送りたい」という気持ちの方が前にあったかもしれません。また、TAC時代からの受験友達とはずっと仲が良く、会計士になった友人の8割は大手監査法人を退職し独立しているか、中小監査法人へ転職しているような状況でした。そうした友人にキャリア選択について相談できたことも心強かったです。
いざ独立するといっても最初から売上が立つわけではありません。ですが、非常勤の監査スタッフをはじめとした固定収入を知り合いからもらうことができ、最低限の収入は確保できる見込みが立ちました。その後、トーマツを退職するタイミングで、同じくトーマツを辞めたのち大手税理士法人に勤め、独立を考えている後輩がおり、色々相談している中で内部統制構築支援等のコンサル業務を提供するために、後輩の池宮城「I」と西田の「N」をとって株式会社NIパートナーズを立ち上げることになりました。また、税務業務を通じた中小法人への支援にも興味があったこと、池宮城が税務業務の経験が豊富であることから、税理士登録を行い、トーマツ時代の先輩が代表を務めている西新宿税理士法人にジョイントし共同代表に就任しました。
池宮城がいなければ今のビジョンが立たなかったと思いますし、本当に素晴らしいパートナーと巡り合えたと思っています。彼はトーマツ時代の戦友であり、仕事において「ずるをしない」「逃げない」人間であるがゆえ心から信頼できるのです。2024年5月、池宮城と私にもう一人、一緒にビジネスをしたいと言ってくれた頼れる後輩の公認会計士が合流してくれ、さらに業務をサポートしてくれるメンバーの合計4人で会社をスタートしました。
ちなみに、合流してくれた後輩の会計士は、優秀が故に私が考えるだけでも様々な選択肢があるため、むしろこちらが本当にいいのかと何度も確認をとったのですが、私たちと一緒に仕事をすることを優先してくれました。本当に有難い限りです。
人の繋がりこそがすべて

独立後仕事の割合は、NIパートナーズが40%、西新宿税理士法人が10%、非常勤監査業務が50%程度の割合です。NIパートナーズの主たる業務の1つ目は、内部統制構築支援です。上場を目指す企業の内部統制づくりは会計士の力が必要になってきますが、大手法人に引けを取らない低価格高品質のサービスを提供できると自負しています。2つ目は、会計コンサルティングです。たとえば、税務顧問先に対して、見積や評価が困難な会計処理をきちんと指導することで、監査対応や金融機関からの資金調達の面で有利になります。経営者からはこうしたニーズがかなりあります。その他、知人の紹介でバリュエーション業務等も担当させてもらいました。独立して分かったのは、とにかく「人の繋がりこそがすべて」ということです。「西田、トーマツを辞めたんだって?こんなことできる?」というように、いろいろな人から仕事をいただいています。また、比較的規模の大きいクライアントからは、弁護士や社労士を紹介してほしいとか、はたまたM&Aのサポート業務ができる会社は紹介できるか等の問い合わせが来ますが、今までの人の縁をクライアントに紹介できることで、更なる仕事が増えていくことを実感しております。
今後の目標は、せっかく独立したので、組織を大きくすることです。ゆくゆくは「定年」に縛られず、自分の裁量で仕事を調節できるような暮らしをしたいものです。組織が大きくなればなるほど「働き方の自由度」も大きくなると思っています。余談ですが、パートナーの池宮城の夢は将来沖縄に事務所をつくることです。家族も沖縄が好きなので、もしかすると余生を沖縄で過ごすことになるかもしれません。
公認会計士として心がけていること
独立前からのことですが、私は「謙虚に人と接すること」を心掛けています。社会人10年目以上にもなれば、自分よりも知識や経験を持っている人ばかりです。ですので「自分から教えを乞う」姿勢を大切にしています。
トーマツ時代のパートナーからは「自分の軸を持て」と言われたことをよく覚えています。「会計監査の解釈」によって会社の業績は大きく変わります。ビッグクライアントからは難題をつきつけられるケースもありましたが、その判断に対して「後ろめたい」と感じたときは自分に甘くなったときだと思うのです。ビジネスにおいては落としどころや妥協が時に必要となることもありますが、その判断が「後ろめたい」かどうか、自分の信念を持たなければ監査を含め、自分の仕事を全うできないでしょう。
読者の若手会計士の皆様にアドバイスがあるとすれば2つあります。1つ目は、どんな仕事でも真摯に取り組んでほしいです。それによって得られるものは自分のスキルや経験だけではなく「周囲からの信頼」です。将来的に、周囲からの信頼が業界の中の評価に直結することを忘れないでください。
2つ目は「転職するタイミングに正解はない」ということです。監査法人での勤務期間が長くなればなるほど、将来的に好待遇で非常勤監査の仕事ができます。他方、転職を早めれば早めるほど、新しい経験を積めることになります。トレードオフの関係ですね。ただ、1年に1回は、将来のキャリアについて自問自答すると良いでしょう。何も考えずにダラダラ監査法人に居続けるのは危険で「自分の意思で今の職場にいる」ということが大事だと思います。いずれにしても、公認会計士は食うには困らない職業です。TACで受験勉強中の皆様には是非頑張ってもらいたいです。
プロフィール

トップランナー 公認会計士 vol.28
株式会社NIパートナーズ
代表取締役 公認会計士
西新宿税理士法人
代表社員 税理士
西田 経雄 Tsuneo Nishida
1980年生まれ 東京都出身
2002年早稲田大学商学部卒
2005年公認会計士試験(旧二次試験)合格後、有限責任監査法人トーマツにて監査業務等に従事。
2023年に独立開業。
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