総合商社を数字で支える
プロフェッショナル
執行役員 エネルギー・コーポレート経理部長
鈴木 道夫さん

中央大学の経理研究所で歩み出した公認会計士への道
私が公認会計士への道を歩み出したのは中央大学へ入学する直前でした。入学手続書類に同封された経理研究所(以下経理研)のパンフレットをたまたま目にした私は、公認会計士試験の合格体験記を一読し「私も挑戦してみよう」と感じたのです。そこには在学中3年生で合格した方のいきいきとした姿がありました。その瞬間は、自分でもできそうな気がしたのでしょう。その後、大変な苦労をするわけですけれども。受験勉強は予備校に通わず、経理研のカリキュラムに沿ってやっていました。旧試験制度でしたので、短答式試験や科目合格の制度もなく、7科目の論文式試験を一発合格する必要がありましたが、大学3年生で論文式試験になんとか一発合格することができました。合格後は、経理研で簿記と原価計算の講師を担当しました。

監査法人入社後2年目で香港駐在
私が公認会計士試験に合格した1995年は就職氷河期に突入していて、在学合格している人でも大手監査法人から内定がもらえない人がかなりいました。そのような状況でしたが、公認会計士協会の職業斡旋コーナーの求人広告を頼りにしながら、何とか中小の監査法人に就職することができました。そこに6年間在籍したのですが、入社2年目で香港へ出向することとなります。現地のクライアントは日系企業でしたが、スタッフは全て現地人で英語でのコミュニケーションには大変苦労したものです。香港は非上場企業も監査が義務づけられていたため、小規模クライアントの記帳代行や税金計算業務、さらには銀行口座開設へ同行するなど、何でも屋のように仕事をしていました。香港事務所はスタッフの入れ替わりが激しかったため、駐在2年目には古参のような立ち位置になっていました。香港での仕事は楽しかったのですが、将来のキャリアを考えたとき2つの課題がありました。1つは、公認会計士試験の3次試験に合格し公認会計士登録をしたかったことです。もう1つは、オーソドックスな国内監査を経験したかったことです。この課題をクリアするために、香港駐在は3年で終えることにしました。

パブリックセクター向け監査の市場拡大から大手監査法人へ転職
帰国後、2年間の国内監査に携わった私は、当時の新日本監査法人の国際部(のちの現有限責任あずさ監査法人)に転職しました。当時、独立行政法人の監査や官公庁を対象とする民間仮定財務諸表作成支援業務などパブリックセクター向け市場が拡大し、公認会計士の採用ニーズが高まっていました。私が配属された国際部はKPMG系でしたが、翌年にスピンオフし、300名規模のあずさ監査法人として独立しました。その後、当時の朝日監査法人と合併し、3,000人規模のあずさ監査法人となった頃には上場企業や大手企業の監査にも携わるようになっていました。

監査法人と事業会社の「違い」を肌で感じる
三井物産と関わりを持つようになったのは2016年からです。三井物産の監査人は有限責任監査法人トーマツですが、あずさ監査法人は、非監査業務に携わっていました。そんな中、私は三井物産の経理部へ出向。経理部の一員として、業務内容も勤務スケジュールも三井物産の経理部員と同じ働き方をしました。経理部では、いわゆる主計業務を主に行っていました。各事業部の経理部署がまとめたセグメント別の決算を親会社として連結する業務です。損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書と3つのチームのうち私は損益計算書のチームリーダーを担っていました。丁度、経理部の業務にも慣れてきた頃、三井物産の経理部と事業部に近い経理部署の経理の仕事を三井物産ファイナンシャルマネジメント株式会社(以下、MFM)に移管するプロジェクトが始まりました。この移管の中で私が従事していた業務とともに私自身もMFMに異動しました。今では、有価証券報告や短信、会社法計算書類などの作成業務や三井物産の経営会議資料、IR向け開示資料などもMFMが担う体制になっています。また、世界中に約500社ある関係会社の決算数値のチェックのほとんどをMFMが行っています。
出向中は、様々な業務改善案を設計していきました。例えば、収益認識の業務効率化。従来は、売上を総額と純額どちらで認識すべきかを業界の取引慣習や単体と連結総体の違いも加味しながら緻密に精査し、作業量が膨大になっていました。IFRSの収益基準が改訂されたのを機に、こうした作業負荷を軽減するために、合理的な範囲で売上の総額と純額を客観的に判定する方法を導入しました。三井物産グループのカルチャーの1つに「前例にとらわれずに絶えず変化していくべきだ、単なる繰り返しは衰退の始まりだ」という考え方があります。ルールを重んじるだけではなく、創造性があり、クリエイティブな人が集まっています。親会社と子会社間の異動も活発で、社員一人一人が前任者のやり方にとらわれず、自ら考え、改善を提案し、どんどん進化しています。この環境が私にとって大きな刺激となりました。三井物産へ出向してから4年が経過した頃、監査法人への帰任の打診がありましたが、MFMの仕事にやりがいを感じ、私は転職を決意。監査法人を円満退社することになります。

執行役員副社長補佐とエネルギー・コーポレート経理部長を兼任
転職後、決算開示業務部の副部長と損益計算書のチームリーダーはそのまま続投となりました。その後、現在のエネルギー・コーポレート経理部に異動し部長に就任。主計業務とは異なったエネルギー分野の営業経理を担当します。関係会社の決算分析から三井物産の船の運賃の処理や受取配当金に関する処理まで幅広い経理業務に従事しました。今では30人ほどの部下を抱えるようになり、業務はマネジメントの側面が大きくなりました。
2025年の6月からはMFM執行役員副社長補佐に就任し、部長と兼務することになりました。執行役員としてはエネルギー分野を含めた6つのセグメント経理部と決算開示業務や決済業務、関係会社経理業務を担当する部署など合わせて9つの部署を管掌することになります。執行役員になったことで、自部署だけでなく会社全体の方向性に対する意見が求められる立場になりました。MFMをより専門性の高い組織に導くため、組織運営に関する幅広い業務を担っていますが、とてもやりがいがあり、日々楽しみながら仕事をしています。

短答式試験合格者や税理士試験簿記論合格者も採用していきたい
加えて、採用についても関与するようになり「必要なメンバーをどのようなルートで採用するのか」を考え模索している状況です。私はMFMを経理・財務のプロあるいはコンサルのように頼られる専門家集団にしていきたいと考えています。現在、MFMには公認会計士が7人所属していて、監査法人や税理士法人出身者が多数派です。公認会計士だけでなく、短答式試験合格者や簿記1級、税理士試験の簿記論、財務諸表論の合格者など、会計の面白さを知り、真剣に学んだ方を含めて採用していきたいと考えています。資格の有無というよりは、会計を学問としてではなく、実学として将来のキャリアの強みにしていきたいという思いが大事です。
MFMは「会計が大好き」「簿記が大好き」な方には魅力的な組織だと思います。例えば、数字や出てきた結果を読み解き分析をしたり、会社の利益を増やすために何ができるのかをデータをもとに考えることに面白さを感じることができるからです。また、海外・国内にある三井物産の関係会社への出向、実務研修を通して、事業会社の経理業務を経験している人も増えてきています。いずれは、三井物産グループ各社でMFMの社員が経理の中核を担うことができるようになっている姿を描きたいと考えています。経理業務を通してビジネスを読み解き、会社の成長のため様々な提案をすること、そして向上心や成長意欲の高い方を求めています。
プロフィール
トップランナー 公認会計士 vol.32
三井物産フィナンシャルマネジメント株式会社
鈴木 道夫 Michio Suzuki
中央大学経済部を卒業後、小規模の監査法人を経て、新日本監査法人国際部(現あずさ監査法人)に入所。2016年から三井物産の経理部へ出向し、2020年に三井物産フィナンシャルマネジメントに入社。三井物産グループの経理機能会社としての深化×進化の姿を日々追究している。
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