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トップランナー 公認会計士

『会計×IT』で社会課題を解決する

株式会社アタックス・エッジ・コンサルティング
代表取締役社長 酒井 悟史さん

中堅中小企業へのこだわり

2009年に有限責任監査法人トーマツへ入所し、トータルサービス事業部(以下TS)に5年間所属しました。論文式試験に合格してから「監査法人選び」を始める人が多いと思いますが、私の場合は最初からトーマツのTSに行くと決めていました。大企業ではなく中堅中小企業をサポートする仕事がしたかったからです。当時のTSは、中堅企業のIPO支援においては圧倒的なシェアを誇っていました。

私が会計士として中堅中小企業のアドバイザーになりたいと思った理由は2つあります。
1つは、経営者との距離が近く直接多くのコミュニケーションをとれるため、仕事のやりがいにつながると思ったからです。もう1つは、中堅中小企業には解決するべき課題が多く存在し、会計士としての付加価値を発揮しやすいと考えたからです。

TSで担当したのは、データセンター事業、ミドルウェア・アプリケーション開発事業・クラウドセキュリティ事業などを手掛けるIT企業がほとんどでした。自分自身の公認会計士としての強みを「会計×IT」にしたかったため、IT企業に関与割合が多くなるようアサイン要望を出していました。

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アタックス税理士法人への転職

転職を意識したのは、20代の終盤です。監査以外の職場でキャリアを積み直すのであれば、若いうちに転職したほうが得策だと直感しました。当初は監査法人グループ内の税理士法人等に転籍をするか、外部の税理士法人へ転職するかという二択で迷いましたが、後者を選択しました。

TS時代のクライアントは、売上高50億~300億円規模が中心でした。BIG4の顧客の中では小規模なのですが、個人的にはもう少しダウンサイズしたかったのです。グループ内で転籍した場合、クライアントの規模がやはり少し大きくなってしまうと考えました。

そして、アタックス税理士法人を選んだのは『社長の最良の相談相手として日本一になる』というビジョンが私のキャリア軸と完全に一致したからです。

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2014年1月、アタックス税理士法人へ入社すると「新人アシスタント」として基本的な税務業務から携わりました。修了考査で「税務実務」は勉強していたものの、実務に慣れるまでには数か月かかりました。入社月が1月でしたので、12月決算・3月決算と繁忙期から経験できたことは幸運でした。

「紙」「手作業」の多さに驚愕し、クラウド会計の可能性を感じる

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アタックスで最初に担当したクライアントでは「手書きの帳簿」を初めて目の当たりにします。転職1年目は、とにかく「紙」「手作業」「属人的業務」の多さに驚愕し、私が改善すべき課題はここにあると直感しました。

その当時はクラウド会計ソフトの黎明期でした。今や上場された某クラウド会計ソフトベンダーの社長に直接お話を伺う機会があったのですが、「世の中のどこかにデジタルのデータがあれば、それを連携させて、記帳に使えばいい」という発想に衝撃を受けたことを覚えています。

「会計×IT」で課題解決していくことを本気で決意し、翌年には推進プロジェクトチームを社内に発足させました。

早すぎたクラウド会計の実装

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クラウド会計を使いこなすためには、実戦から多くのノウハウを蓄積する必要がありました。加えて、既存顧客に対して、クラウド会計を導入するメリットを説明する必要がありました。当然ながら新しいものに対する抵抗もありますし、保守的な経営者や経理部長もいらっしゃいます。

そこで、クラウド会計のソフトウェアベンダーと業務提携し、ユーザー顧客をご紹介していただく営業スタイルを選びました。こうして私たちは「クラウド会計を活用した業務効率化」の提案を開始しました。

しかし、当時のクラウド会計と連携できるデータは、主に銀行・クレジットカード会社などの金融機関に限られました。今日のようなクラウドとクラウドがAPI連携することがまだまだメジャーではありませんでした。自動化できたのは現預金の取引程度で、結果として「手作業」を減らすことはできなかったのです。

開発に限界を感じ、自らプログラミングを学ぶ

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振り出しにもどった2017年には、RPA(Robotics Process Automation)という言葉が流行り始めます。私たちは、RPAやクラウドツールの「実験」を繰り返しました。努力に努力をかさねて独自のRPAをつくったものの、やはり当時はまだロボットができることに限界がありました。

そして、ロボットを高いレベルで使いこなすためには、私たち自身にプログラミングの知識が必要ではないか?という結論に達しました。この時に「課題解決に必要なものが世の中にないのであれば、プログラミングを1から勉強し、自分たちで創ってしまおう!」とクレイジーな決断をするわけです(笑)。

同僚会計士3人でオンラインのプログラミング・スクールで学習を開始します。とにかく朝から晩まで勉強し、6か月のコースを2か月で修了しました。HTML、CSS、PHP、Ruby、さらにはフレームワークであるRuby on Rails…。Webアプリケーション開発に必要な一通りの知識を習得し「プログラミングの基礎がわかる公認会計士」が社内に4名誕生しました。

開発ツールが評価され、大手会計ソフトベンダーが協力支援

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試行錯誤の末、まずはグループ内の税理士法人の課題解決として、税務監査業務の支援ツールの開発に着手し、約半年程でプロトタイプの完成まで漕ぎつけました。

そして、2018年10月。大手会計ソフト会社の社長とお会いする機会がありました。某有名会計ソフトの開発者でもあるその社長が、私たちの開発したツールに興味をもってくださいました。さっそく本社に伺いプレゼンテーションを実施すると、想像以上に高い評価をいただけたのです。「すぐに特許を取得するように!」と弁理士さんまでご紹介いただきました。

後日「会計システムのデータ演算処理ロジックに係る特許」を4つ取得できました。更には、大手会計ソフトベンダーとの業務提携も射程に入り、私自身が外部コンサルタントとして当該会計ソフトの監修を担当することになります。

ソフトウエアの開発は、現場を理解し課題意識のある人が担当することが最も効果的といわれます。気づけば、公認会計士の私が開発に取り組むというクレイジーな決断は、DevOps(デボップス)の実現であり、結果的に競争優位の構築に寄与していました。「会計×IT」にこだわり続けた私の努力が、ようやく報われたのです。

私のミッションは「会計×IT」で社会課題を解決すること

現在、独自開発したシステムのユーザー数は100社を超えました。近日中の外販も視野に入れながら、中小中堅企業のDX支援コンサルティングを主軸事業として進めていきます。

2021年10月にデジタル庁が新設され、翌年には電子インボイスの仕組みが社会実装されようとしています。請求データがすべてクラウドにつながる日はもうすぐそこに来ています。また、電子帳簿保存法・スキャナ保存法が大幅に緩和され、ペーパレス化が一気に加速することでしょう。これによって、クラウド会計の導入も飛躍的に普及するはずです。

地方自治体においてもクラウドサービスの導入・利活用がさらに注目されています。最近では、日本マイクロソフト社が取り組んでいる官民連携の地方創生プロジェクトに参画し、先端事例の共有を通じた地方の活性化イベントに先日登壇したばかりです。

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強い追い風が吹いている今、「会計×IT」を軸にして多くの社会課題を解決することが私の使命だと思っています。DXの推進についていけない会計事務所も散見されます。中堅中小企業の支援「to B」に加えて、会計事務所の支援「to A」(A=Accounting firm)も視野に入れたいと考えています。

100人に1人のスキルを3つ持てば、100万人に1人の人材になれる

日本人全体の中では会計士資格を持っているだけで「レア」な存在になれますが、会計士業界の中では、3万人の中の1人として埋もれてしまいます。

しかし、「会計×何か」という掛け算の発想でキャリア形成することで、自分の市場価値を高めることが可能です。

100人に1人のスキルを3つ持てば、100万人に1人の人材になれます。これから会計士を志す人、若手の公認会計士の皆さまには「会計」×「IT」×「何か」という組み合わせをお勧めしたいです。

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プロフィール

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トップランナー 公認会計士 vol.2
酒井 悟史 Satoshi Sakai
株式会社アタックス・エッジ・コンサルティング
代表取締役社長
公認会計士


慶應義塾大学経済学部卒。公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツ・トータルサービス事業部にて、監査業務の他、株式公開支援業務等に従事。2014年、アタックス税理士法人に参画し、主に上場中堅企業の法人税務業務に従事。2019年、株式会社アタックス・エッジ・コンサルティングの代表取締役に就任。現在はクラウド会計や開発システムの導入を通じ、中堅中小企業および会計事務所のイノベーション促進に取り組んでいる。

会社情報

株式会社アタックス・エッジ・コンサルティング
https://www.attax.co.jp/
TACマリッジコンシェルジュ
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