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トップランナー 公認会計士

会計士としてスポーツ産業に携わる

Fanatics Japan(ファナティクス・ジャパン合同会社)
コーポレート部 マネージャー 宮本 翔さん

監査法人に勤めながら早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程へ

公認会計士試験に合格した後、あずさ監査法人の国際事業部に配属されました。入社後3年目くらいまでは新しい科目を任されたり、監査チームのインチャージ(主査)を任されたり、日々目の前の新しい事を学ばせていただき、刺激のある日々でした。
監査法人に勤めて4年目を迎えたあたりから「30歳までに公認会計士としてのキャリアの方向性を定めたい」と考えるようになります。順調にシニアに昇格して何不自由ない環境だったのですが、自分が周囲と差別化できていないと思ったからです。それからおよそ2年後の2015年に、あずさ監査法人の中に「スポーツアドバイザリー室」という新しい組織が立ち上がります。もともとスポーツが好きだった私は、すぐに「スポーツアドバイザリー室」を立ち上げた先輩会計士のところへ話を伺いに行きました。

当時のスポーツ業界は、経営戦略や財務管理体制の整備が発展途上であること。また、クラブチームの経営は、選手の獲得、観客を継続的に呼びこむための施策、スタジアムの運営からグッズ販売にいたるまで考えるべきことが非常に幅広いこと。さらには、個々のクラブチームのヒト・モノ・カネといった経営資源が恒常的に不足しており、必然的に外部の専門家の力が必要であることなど、会計士として取り組めるべき課題がたくさん見えてきました。

このことがきっかけとなり、私は監査法人に勤めながら早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の社会人修士課程(1年制コース)に通学することになります。大学院の講義は平日の夜と土曜日が中心でしたが、当時の上司やメンバーの理解と応援のおかげで、監査繁忙期も休むことなく通学することができました。私のわがままを受け入れてくれた上司やメンバーには今でも本当に感謝しています。お陰様で修士課程を総代(首席)で卒業することができました。

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クラブチームが対峙する様々な経営課題と向き合う

大学院の修士課程を修了した後、念願のKPMGスポーツアドバイザリー室へ異動。KPMGスポーツアドバイザリー室の本部はハンガリーにあり、イタリアのセリエA、スペインのリーガエスパニョーラ、イングランドのプレミアリーグ等のクラブチームの企業価値評価等をはじめとした様々なコンサルティング業務を行っています。日本のスポーツアドバイザリー室での業務は、経済産業省やスポーツ庁をはじめとした官公庁から受託したレポート業務が中心でした。

当時作成した「スポーツ×先端技術」をテーマにしたレポートが、その年の「KPMGチェアマンアワード」を受賞しました。興味のある人は、ぜひ下記URLからご一読ください。

https://www.mext.go.jp/sports/content/20200330-spt-sposeisy-300000950-01.pdf

簡単に説明すると「スポーツがどれだけ社会に貢献しているのか?」「今後どのようにスポーツ市場が拡大し、新たな市場を創出していくのか?」ということをまとめたものです。

スポーツは様々な業界の「ハブ」になることができます。たとえば「スポーツ×食品」の事例を挙げると、2017年12月にJリーグのコンサドーレ札幌が「ガリガリ君」でおなじみの赤城乳業とパートナーシップ契約を締結しました。タイのメッシといわれるチャナティップ選手を起用した「ガリガリ君」の広告活動は功を奏し、タイ国での拡販に大成功します。

日本のスポーツ業界、とりわけクラブチーム経営については、欧米と比較するとかなり遅れているといわれています。たとえば、日本のプロ野球ですが、ビジネスの観点からみれば20年前はアメリカのメジャーリーグと同等の市場規模でした。しかし、現在のメジャーリーグの市場規模は、日本のプロ野球の約4倍となっています。

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日本では、12球団が独自の裁量で運営する「チームビジネス」であるのに対して、メジャーリーグでは「チームビジネス」とは別途、MLBが30球団を「リーグビジネス」としてコントロールしています。各球団の部分最適ではなく、リーグの全体最適を実現しているのです。会計士的に言えば、いわゆる連結としてのリーグ経営が非常にうまくいっています。

たとえば、「チームビジネス」で得た収益の30%を集めて収益力の低いチームに分配し、戦力の均衡を担保する仕組みがあります。1球団の選手年俸総額が一定の閾値を超えた際に課される「ラグジュアリータックス(贅沢税)」も有名です。

プロのスポーツリーグには、プロ野球のような「クローズド」型とJリーグやBリーグのような「オープン」型があります。クローズド型のリーグは、参加クラブ数が限られ昇格や降格はありません。降格のリスクがないため、スポンサーにとっては投資がしやすいというメリットがあります。

他方、オープン型のリーグは昇格・降格があるためクラブ経営を安定させにくいというデメリットがあります。ですが、オープン型ではリーグに参入できるクラブ数が圧倒的に増えるため、スポーツを通じた地域活性化などに貢献しやすい仕組みといえます。

いずれのリーグ形態においても、クラブチームは収益や費用の管理から人的資源の確保まで様々な経営課題を抱えているのです。

クラブチームのオフィシャルグッズを手掛ける国内唯一の企業

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2018年11月、現職のファナティクス・ジャパンへ転職しました。会計士の集団である監査法人の外に出て、より幅広い人脈と専門能力を身につけたいと考え事業会社に転職しました。

親会社のFanatics Inc.は世界最大級のオフィシャル・スポーツ・ライセンス・マーチャンダイズ企業です。米国では上場準備中であるものの、すでに1兆4000億円の市場価値があるといわれています。企業価値が1,000億円を超えるとユニコーン企業と呼ばれる中で、スポーツというドメインにおいて非上場でこの規模まで企業が成長することに欧米のスポーツビジネスのダイナミズムを感じることができます。ファナティクス・ジャパンでは、野球、サッカーをはじめとして、テニス、ゴルフなど様々なスポーツに携わることができ、常に海外からの情報が入ってくる環境が魅力でした。

クラブチームの売上は大きく「スポンサー契約」「放映権」「チケット売上」「グッズ販売」に区分することができます。

ファナティクス・ジャパンは、クラブチームのオフィシャルグッズ販売に特化した企業。オフィシャルグッズの製造・販売の権利を譲り受けて製造・販売を行うことでコンテンツホルダーの収益をグッズ面でサポートする企業です。

グッズの製造・流通・販売をコントロールすることは容易ではありません。たとえば、ユニフォームの在庫管理だけでも大変です。通常のアパレルとは異なり、サイズに加えて「背番号」別の在庫管理が必要となってくるからです。選手の引退や移籍などが発生すると、商品評価損を認識せざるを得ないケースもでてきます。

参考までに、アメリカではアパレルが最も売れますが、日本では小物が良く売れるという特徴があります。グループのノウハウを最大限に活かした日本特有の「最適なプロダクトミックス」を考えることも私たちの仕事の1つです。

経理をはじめとした管理部門から広報まで、業務の幅は広い

日本法人の正社員は約60名で、管理部門は私を含めた3名だけです。そのため、経理・税務・財務・人事・労務・総務といった管理の仕事から広報まで守備範囲はかなり広域です。最近では、4カ月間で新しい会計システムの導入というグローバルプロジェクトを終えたばかりです。

グローバルとの連動もあったため、欧米時間に合わせた早朝・深夜の会議を英語で実施し、無事にローンチまで遂行しました。現在は、グローバルの人事・給与計算システムを新たに日本法人に導入中です。

広報業務では、プレスリリースをはじめとしたメディア対応も担当しています。2020年、ファナティクス・ジャパンは、清水エスパルスと10年間の「戦略的マーチャンダイジングパートナーシップ契約」を締結しました。広報担当者として、Jリーグで初の契約となった本件について、メディア関係者へ強くPRしました。その結果、日経新聞をはじめとしたメディアに記事が掲載され、新規顧客の開拓へつなげることができました。

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会計士の「多様なキャリア」を知るきっかけとなった「CPA TALKs」

大きな舞台で「日の丸」を背負って戦うアスリートの姿からは、大きな力をもらうことができます。たとえば、サッカーのワールドカップ。歴代の視聴率を見ても明らかなとおり、わずか90分という1つの試合で、多くの日本人をポジティブにすることができます。

スポーツほど人間を一瞬で元気にしてくれるエンターテイメントは存在しないと思いますし、そういった点からスポーツは精神的なインフラといえるのではないでしょうか。

会計士としてのキャリアを好きなスポーツの産業で形成できていることは、幸せなことだと思います。

監査法人の待遇は安定しています。そのため、年収を下げて新しいことに挑戦することに迷いが生じてしまいがちです。私は妻の理解もあり、年収を落として「やりたい仕事」を選んで挑戦することができています。妻には大変感謝しています。

私が会計士の「多様なキャリア」を知るきっかけになったのは、日本公認会計士協会 東京会 青年部特別委員会が主催する「CPA TALKs」というイベントです。

https://jicpa-tokyo-cpa-youth.jp/cpatalks/

現在、私は青年部特別委員会の委員長を務める立場となり、2021年3月には「会計士の志」というテーマで同イベントを運営し、当日は約400名の公認会計士及び準会員の皆様に参加のご応募をいただきました。

多様な会計士を知ることで「進むべき道」のヒントが見つかります。私の場合は「スポーツ」でしたが、若手会計士の皆さんには「自分がワクワクすること」を探してほしいです。答えは自分の中にしか存在しませんが、自分との対話は、時として非常に苦痛ですし、時間がかかる作業です。どんなに仕事やプライベートで忙しくなっても逃げ出すことなく「自分と対話する時間」を残しておくことが重要です。
これは会計士の魅力の1つですが、一度会計士のライセンスを取得してしまえば、全国に約40,000人いる様々なフィールドで活躍する会計士と容易に接触することができます。自分と対話する時間を確保して、少しでも興味あるフィールドを見つけたらそのフィールドで活躍する会計士に話を聞きに行くことで、ご自身の見える世界が変わるはずです。固定観念に縛られず、自分自身の答えを見つけに行ってください。

プロフィール

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トップランナー 公認会計士 vol.3
宮本 翔 Sho Miyamoto
Fanatics Japan(ファナティクス・ジャパン合同会社)
コーポレート部 マネージャー
公認会計士


1986年生まれ。幼少期をマレーシアで過ごす。慶應義塾大学経済学部卒業後、2009年に公認会計士試験に合格。有限責任あずさ監査法人で約40社の監査に携わる。2016年から早稲田大学大学院スポーツ科学研究科でスポーツビジネスを学び総代で卒業後、KPMGスポーツアドバイザリー室を経て現職に至る。
一般社団法人Tリーグ監事(18年~20年)、一般社団法人Challenge Active Foundation監事(19年~)、早稲田大学スポーツビジネス研究所招聘研究員(17年~)。