メガバンクで働く金融スペシャリスト
私の公認会計士受験生時代
私の中学・高校時代はサッカー部に所属し、勉学に励む事はなく放課後は友達と遊ぶ毎日でした。特に高校時代は学校以外で机に向かった記憶もなく、そんな状態では意中の大学に合格することなどありえず、とりあえず合格した大学に進学しました。入学してからも最初の1年生は漫然と過ごしていたこともあり、単位が足りず、単位になりそうな授業を探していた時に出会ったのが「簿記」でした。当時は「簿記」が一体何かも知らず、ましてや「公認会計士」という職業があることも知りませんでしたが、大学の授業として専門学校の先生が教えてくれる上に、資格も単位も取れるという“お得感”だけを求めて勉強を始めました。もともと、数字自体が好きだったこともあり、簿記の構造を理解することに大した時間は掛からず、結果として容易に簿記資格を取得することができました。貸借が最後に揃うという“あの感覚”も、面白いと感じるものでした。「会計は自分に向いているのでは?」と考えるようになったその頃に「当時在学中の大学のキャリア支援として在学中に公認会計士試験に合格すると報奨金が支給される」という事実を知ります。学生にとってはかなり大きな金額であったため、まんまと“ニンジン”に釣られ公認会計士試験の受験勉強を開始しました。
楽観的な私は、正直、公認会計士試験をなめていました。難易度は簿記試験とは雲泥の差。報奨金どころか、大学4年生で初めて受験した短答式試験に不合格になってしまうのです。
他方、一般的な就職活動も並行していた私は、地元福岡の地方銀行から内定をもらっていました。もう公認会計士への挑戦をきっぱり辞めて地元に帰ろうと決め、当時通っていた予備校に荷物整理に行ったのですが、その時目に入ったのが同じように不合格になった、一緒に勉強をしていた仲間の姿でした。当時の短答式試験は年に1回だったため、不合格になった直後にも関わらず、約1年後の試験に向けて一生懸命机に向かって勉強をしていたのです。
その光景を見た私は、「自分の結論はこれで正しいのか?」と思うようになり、公認会計士受験を断念して地元に戻るのか?再チャレンジをするのか?という選択でかなり迷いました。ただ、無職の受験生になるという選択肢は考えられず、当時話題だった会計専門職大学院(早稲田大学大学院会計研究科)の受験をし、自分の力がどの程度あるかを試そうと考えました。
そこで、大学院に合格したら東(東京)へ向かい勉強を継続、失敗したら西(福岡)へ帰り就職するということを心に決めました。結果として、大学院に合格し東京で公認会計士受験を継続することになりました。
論文式試験合格後、三菱UFJ銀行総合職「戦略財務会計コース」を知る
大学院に進学した私は、1年目に短答式・論文式試験に合格することができました。学生としての身分があと1年ありましたので、昼夜逆転の学生生活を満喫する生活に戻りました。さすがに就職活動はしないと、と思い、特段志望する業界は無かったのですが、興味があってかつ会計のスキルを活かせるのではないかと考えた、金融・製造業・不動産などの事業会社を中心に就職活動を開始します。監査法人への進路は全く考えていませんでした。公認会計士のキャリアとして監査人になる道と差別化したかったからです。せっかく公認会計士試験に合格したのだから、企業からどの程度評価されるのか?ということを知りたかったのもあります。この時点では金融機関が第1志望という気持ちもありませんでした。
そんな中、三菱UFJ銀行の「戦略財務会計コース」に応募をします。志望度が高いわけでは無かったため、志望動機は「日本で1番大きい会社だからです」と言っていましたが、途中で落とされることもなく連日面接に足を運びました。そして、実質的な最終面接で、当時入行後上司となる方とお会いしたのですが「今までに出会った社会人からは感じられないオーラ」のようなものを感じたのです。うまく表現できませんが、こういう人が世の中にいたのか!という衝撃を受けました。その方から「君みたいな人にぜひ来てほしい!」と言われ、入社を即決したのです。後から分かった事ですが、この方がこの「戦略財務会計コース」の発起人だったようです。今振り返っても「常に課題を設定し、何かをしたい」というエネルギッシュな上司でした。本来、決算業務はルーティンなはずなのに、それを全く感じなかったのです。
最先端のグローバルビジネスの「会計を創る」仕事
三菱UFJ銀行に入行してから11年が経過しました。「戦略財務会計コース」で入行した場合、全体の新人研修や営業店研修が終わると1年目にも関わらず、すぐに本部部署の財務企画部主計室(以下、主計室)に配属します。通常の銀行の人事異動としてはかなり異例の扱いです。まずは数年間、財務・税務領域の基礎を固め、その後様々な部署へ異動してエキスパートとして活躍していきます。
1年目から大きな仕事をしていたわけではありません。最初は大量の紙の伝票に穴をあける「作業」も担当しました。当時はなぜこんなことを?と思うこともありましたが、今思うとこの作業が非常に大切だったことが理解できます。決算は毎日の1つ1つの伝票の積み重ねであり、伝票の基本的な流れを頭に入れ、「各計数のプロセス」をイメージして「end to end」で理解することが重要です。
主計室の決算業務は勘定科目別のチームに編成され、MUFGグループ内の様々な部署から会計税務に関する問い合わせが寄せられます。4年目には固定資産や金融負債を担当するチームのリーダーを任され、退職給付引当金の新しい会計基準の適用などを担当しました。20代でチームのリーダーを経験できたことは大きな成長につながりました。
入行5年目には「市場チーム」へ担当替え。市場チームは、有価証券やデリバティブを取り扱うチームで、業務が急激に難化しました。決算業務以外のスポット案件も担当しました。たとえば、銀行がリリースする新規金融商品に係る一連の会計処理をどのように処理するのか?について、1から考えます。また、大企業のグローバル案件では、世界で初めてのスキームを担当することもありました。取り扱う金額が電卓に入りきらない桁数になることも珍しくなく、数百億円単位の取引は日常茶飯事です。兆円規模の仕訳を入れたこともあります。
日経新聞の一面を飾るようなビッグディールにも多く携わることができました。具体的な企業名は控えますが、再生案件や日本の名立たる大企業関連の案件で、前例のない会計処理を考えてきました。ビジネスの最先端で新しい会計処理を考える仕事は、非常にクリエイティブ、かつ、ダイナミックです。
決算は何もなければルーティン業務ですが、日々変化の激しい昨今の経済環境において、最先端のビジネス環境に身を置いていると、常に新しい事象が起きます。教科書にも参考書にも書かれていない案件を1から考えていくというのは、まさに会計のプロフェッショナルとしての腕の見せ所だと考えています。最前線・最先端のビジネスをフロント部署の方と話し合い、そしてそれを理解し、実態に即した会計処理を考えるのは、ビジネスの“プレイヤー”としての立場でしか、出来ないことです。
また、大企業の大銀行で若手がチームを任せられるなんて事は思ってもみませんでした。かなりのポジティブサプライズですし、こういった思い切った人事配置は「戦略財務会計コース」ならではと感じています。
市場リスク管理室では大規模プロジェクトを推進
2017年、私は主計室からリスク統括部市場リスク管理室へ異動し、会計とは一味違う仕事を経験します。具体的には新CVA(Credit Valuation Adjustment:信用評価調整)規制導入を目的とした大規模なシステム開発プロジェクトに携わりました。
2008年9月のリーマンショックに端を発する金融危機以降、世界の金融機関は社会から「健全性」を強く求められています。経済の重要なインフラである金融システムを担う、金融機関が破綻すれば、社会経済に大きな影響を及ぼすことになります。そのため、十分な「自己資本」を保持する必要があり、世界の各行は自己資本比率規制を守らなければなりません。この規制の一つが新CVA規制です。CVAとは、金利スワップ等の店頭デリバティブ契約等において、取引相手が契約期間中にデフォルトした時に被る期待損失のことで、顧客毎の既存ポートフォリオの信用リスク分の把握に資するものです。この信用リスクと共に、CVAリスクを適切に捕捉するというのが新たな規制です。参考までに、MUFGは金融安定理事会(FSB)の「G-SIBs(※)」として、国内金融機関としては唯一最大の資本保全バッファー(1.5%)賦課が要求されており、それほど社会への大きな影響がある金融機関として指定されております。
(※)G-SIBs:Global Systemically Important Banks グローバルなシステム上重要な銀行
私は、この新CVA規制導入を目的とした大型プロジェクトに会計専門家として参加したのです。このプロジェクトでは、システムの考え方、プロジェクトマネジメントについても学ぶことができました。これまでは、決算業務に携わっている関係者と接する機会がほとんどでしたが、このプロジェクトを通じてこれまで関わりが無かった社内外のプロフェッショナル達と仕事ができたことは大きな財産となっています。
自分とは異なるプロフェッショナルスキルを持つ人達と仕事をすることによって、大きな刺激を受けると共に、自分自身のプロフェッショナルスキルをもっと磨いていかなければならないという決意にもなりました。
公認会計士・税理士受験生採用に意欲的に取り組む
無事に大型プロジェクトを終えた私は、2020年4月に主計室に戻りました。現在は、新しい会計基準の導入や金利指標改革などの外部環境の変化をどのように決算に反映すべきか検討する業務、またMUFGの新商品や新規事業における、会計面や税務面の課題について、社内コンサルタントとしてソリューションを提供する業務を担当。同時に「戦略財務会計コース」の採用活動にも従事することになりました。会計税務に関する高い専門性を有する学生に出会い将来一緒に働いてもらえるように、邁進している日々です。
国内に約4万人いる公認会計士の中でも、金融スペシャリストは少数派です。さらに、メガバンクで活躍している公認会計士・税理士は非常にレアな存在といえるでしょう。そして、MUFGでしか体験できない仕事が必ずあると自負しております。今後、公認会計士・税理士を志す大学生、大学院生の皆様に、会計専門家としてメガバンクで働く魅力についてどんどん情報発信していきたいと考えています。
プロフィール
トップランナー 公認会計士 vol.8
三菱UFJ銀行
冨﨑 勝成 Katsunari Tomizaki
1985年福岡県生まれ。
早稲田大学大学院会計研究科在学中に論文式試験に合格。
趣味はゴルフとお酒。1番の趣味はゴルフで、仕事仲間とラウンドによく行っています。最近のスコアは、100を行ったり来たりになってきたので、早く90台が安定的に出せるようになり、夢の80台へ向けて奮闘中です。趣味のもう1つであるお酒ですが、九州男児なのでけっこう飲める方だと思います。美味しい日本酒を見つけた時は大きな悦びです。
三菱UFJ銀行
総合職「戦略財務会計」についての詳細はこちら
https://www.saiyo.bk.mufg.jp/occupation/senryakuzaimu/
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