世界中の人に喜んでもらえる
サービスを創りたい
取締役 北村 康晃さん
二十歳までは自由を謳歌した学生時代
学生時代の私は、とにかく勉強よりも好きなことに没頭し自由を謳歌していました。小学生時代はサッカー、中学時代は卓球、高校時代はギター。マクドナルドをはじめとしたアルバイトにも精を出していました。周囲が大学進学を考えはじめた頃も音楽の専門学校を志すほどギターにはまっていたのですが、両親からは「大学だけは行ってくれ」と説得されます。高校3年生から受験勉強を開始し、なんとか浪人せずに大学生になることはできました。大学生になってからも、授業はほどほどにバンド・アルバイト・麻雀の日々を過ごしていました。
大学3回生になった頃、就職活動をしている先輩が想像以上に苦労していることを知ります。「行きたい会社」から内定をもらっている人はほとんどいませんでした。この時「このままではマズいかも」と、はじめて将来に対する危機感を覚えたのです。好きなことと楽しいことしかしてこなかった私に「何ができるのか?」と考えた結果、父親が公認会計士・税理士だったことを思い出します。正直、会計士や税理士という職業にまったく憧れはありませんでしたが「勝負をするなら、これしかない。」と直感したのです。そう考えた翌日、TAC梅田校を訪問し「公認会計士」と「税理士」のパンフレットを一読しました。税理士試験は1科目ずつ合格科目を増やせるが、5科目合格するまでに時間がかかる。反対に会計士試験のボリュームは大きいものの「短期決戦」の試験であることを知ります。私は「公認会計士」を選択しました。その日から軽音楽部も辞め、大学にも行かずに「TACの住人」となりました。友達もつくらずに、朝から晩まで梅田センタービルで勉強したのです。
あずさ監査法人では監査とともにアドバイザリー業務を経験
公認会計士試験には、2回目の受験で合格することができました。2006年の論文式試験合格後、私はあずさ監査法人大阪事務所へ入所します。最初の3年間は、製造・小売・流通業から金融機関まで幅広い業種の監査を経験し、3年目からはインチャージも担当しました。
会計士3年目、ちょうど修了考査を受験した前後から「会計士としてのキャリアプラン」を考えるようになりました。辿り着いた答えは「海外で仕事をしたい」ということと「アドバイザリー業務を経験したい」ということの2つでした。上司の理解もあり、翌年からM&Aや海外案件をスポットで担当させていただけました。転職することなく、監査法人の中で経験を積むことができたのです。年間を通じて「監査」→「アドバイザリー」→「監査」→「アドバイザリー」と休みなく働き、仕事が終わってから終電までは毎日英語の勉強もしていました。大変でしたが、苦に感じることは全くありませんでした。それまでの20年間を自由に過ごしてきましたので。
27歳で海外MA案件に携わる
20代の頃はとにかく喜んで仕事を引き受けるように意識していました。経験値が欲しかったのでしょう。そして、ついに海外へ行くチャンスが訪れます。
上司 「中国でMA案件があるけど、やってみる?」
私 「はい!」
上司 「じゃぁ、現地に一人で行ってきて。」
私 「はい!」
上司 「あ、クライアントは一切英語できないからね。」
私 「え?」
27歳の私は、インフラ系企業のM&A案件で中国の蘇州市へ。日本企業が中国企業を買収するスキームのDD(Due Diligence)を任されました。蘇州でもメンバーとの意思疎通は全て英語でしたが、勢いで何とか乗り切りました。日本に帰国した私は、海外チームからの英文レポートの翻訳も担当し、クライアントへのプレゼンテーションを終えることができました。初めての海外プロジェクトをやり切って、大きな達成感を味わいます。これを機に、海外で成長フェーズのクライアントを支えるアドバイザリーの仕事がしたい気持ちが強くなりました。目標が明確になり、欧米ではなくアジア諸国への赴任を希望したのです。
監査法人7年目から東南アジア3か国に赴任
入社7年目、ついに海外への赴任が実現します。ミャンマー(2013年)、タイ(2014年)、フィリピン(2015年)と3年で3か国に滞在しました。特に印象に残っているのは、ミャンマーでの1年間です。日本人は所長と私の二人だけのインターナショナルチーム。もちろん、仕事はすべて英語です。現地ではミャンマーに進出する日系企業の担当窓口として多種多様な仕事を経験しました。「発電所をつくりたいけど何から始めたらよいか?」といったゼロベースの案件も多く、とにかく毎日がクリエイティブ。当時は、貸借対照表も損益計算書も存在しない現地企業も珍しくありませんでした。
ともあれ、ミャンマーの成長力は著しく、街並みは毎日変化していきました。スマートフォンの普及率もたったの1年間で数%から50%を超えるほどのスピード感。ミャンマーという国のエネルギーを肌で感じることができたのです。ミャンマー時代で最も心に残っているのは当時の上司の言葉です。
「私は“日本企業の進出”という表現が嫌いです。日本はミャンマーに投資をしているのではなく、ミャンマーの土地・水・空気・ヒトなどをお借りしてビジネスをさせてもらっているのですから。」
このような考え方を持つ上司と共に働けたことは本当に幸せでした。
その後バンコク(タイ)での駐在を経て、最後の1年間はマニラ(フィリピン)へ赴任しました。マニラの街中ではFacebookがWi-Fiを無料配布しており、電化製品も韓国や中国製ばかりでした。「Made In Japan」を目にするのは自動車ばかりで、あとは社内イベントで、日本のアニメキャラが登場する程度。現地で本当の価値を提供している「日本」が見つからず悔しい思いをしたことを覚えています。その頃からでしょうか。「日本からサービスを創り、海外の人に喜こんでもらえる仕事がしたい」と思うようになります。
リクルートで感じた圧倒的な当事者意識
日本へ帰国した時、私は32歳になっていました。このままKPMGに残るか、それとも、事業会社へ転職するのか迷っていましたが、「アドバイザー」ではなく「当事者」として日本から海外にサービスを提供したいという想いを上司にも理解頂き、リクルートへ転職しました。リクルートでは主にM&A、スタートアップ企業への投資検討・DD(Due Diligence)・投資後のPMIや投資評価までを担当しました。海外案件も多く、米国、欧州、中国、東南アジアなど幅広い国をカバーしていました。今までは企業外部のアドバイザーの立場でM&Aに携わってきましたが、事業会社の中に入ってみると、その「立ち位置」が大きく異なります。たとえば、ある案件に投資をするか否かについて、アドバイザリー時代と同様にA案・B案・C案とそれぞれのメリット・デメリットをまとめて上司に報告したのですが「A案、B案ではない。お前がCFOならどうしたい?もっと覚悟を決めて提案しろ!」と熱いフィードバックを受けました。圧倒的な当事者意識を目の当たりにしたのです。リクルートにいた2年間で、魅力的な人との出会い、経営塾での学び、当事者意識をもってやり切る事の大切さを徹底的に学びました。
グローバル×スタートアップ×CFO
2020年11月、私は現職(株式会社ジグザグ)に巡り合います。ジグザグが展開しているサービス領域は「越境EC」で、私が大事したい世界中の人に喜んでもらえるサービスです。
あまり知られていないのですが、実にたくさんの人が海外から日本のECサイトを閲覧しています。ですが、「言語」「決済」「物流」の壁によって、なかなか購入には至りません。ジグザグが提供する『WorldShoppingBIZ』はこの全ての障壁を取り除くことで、世界中の人々がMade In Japan を手にすることを実現しています。特にアパレル商品やコンテンツ商材はニーズが強く、変わったものでは高級サプリメントやトレーディングカードなど、実に様々な商品が取引されています。海外売上100%のジグザグは創業8年目を迎え、約50名の社員の3割は外国籍という多国籍なチームです。
ジグザグにジョインしてからは、経理・財務・法務・人事といったコーポレート機能の立ち上げから着手し、CFOとして中期戦略立案から投資家とのコミュニケーション全般を担当しています。顧客が100ヵ国を越える海外ユーザーですので、為替変動や海外現地の情勢を常日頃考えておくのが大事です。スリランカで非常事態宣言が出た、トルコで大地震が起きた、などの情報をキャッチして「通関は動いているのか?物流は大丈夫か?」と頭の中を巡らせる日々です。グローバル×スタートアップの経営は、世界中にアンテナを張り巡らせる必要があり、楽しいですが、気が抜けない毎日です。
Let’s try! Keep challenging!!
若手会計士の皆さんには、とにかく好奇心を大切にしてもらいたいです。「M&Aは面白そう」「AIで監査はどう変わるのだろう」何でも興味を持つことで、会計士としてやりたいことが見えてくるはずです。そして挑戦してたくさん失敗しましょう。失敗から学べば大丈夫。会計士である限り、もし転職で失敗しても「食べてはいける」はず。マラソンと同じで途中で投げ出さず、ゆっくりでも完走すれば、必ず各々のゴールにたどり着けると思います。
プロフィール
トップランナー 公認会計士 vol.21
株式会社ジグザグ 取締役
北村 康晃 Yasuaki Kitamura
KPMGあずさ監査法人で会計監査、IFRS導入支援やM&Aアドバイザリー業務を担当後、東南アジア複数国でジャパンデスクとして日系企業の海外展開を支援。帰国後、リクルートで海外を中心としたM&AやStartup投資を担当。バイオベンチャーでの経験を経た後、現在は越境ECサービスを提供するジグザグで、世界中のユーザーの欲しいに応えるために奔走中。プライベートでは子供と遊ぶ事と、海外旅行が趣味。
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