フリーランス会計士からの会社設立
「フリーランス会計士」として業務の幅を広げた20代
論文式試験に合格すると同時に、TAC公認会計士講座で財務会計論(簿記)の講師として教壇に立ちました。専任講師として勤めたのは初年度だけでしたが、講師として15年間、会計士受験生と接してきました。
社会人2年目からは、新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)で非常勤スタッフとして監査の現場に入りました。修了考査合格を経てからも「もっと監査をしたい」という気持ちが強く、尊敬する先輩が設立した法人(監査法人アヴァンティア)で監査実務を継続しました。
20代の頃は、興味をもったことすべてにチャレンジしていました。
「やったことのない仕事をする」
「信頼している人からの仕事は引き受ける」
「教えてもらいたい会計士の先輩から学ぶ」
を信条に、
監査・ファンド・企業経理・大学非常勤講師・執筆など、常に5つ以上の仕事を掛け持ちしていました。
いわば、フリーランスの公認会計士です。今日となっては珍しくない働き方ですが、当時は「本業に集中すべし」とお叱りを受けたこともありました(笑)。
クラウドファンディングという言葉がない時代に
フリーランス会計士として様々な仕事をした中でも、先輩が勤めていた投資型クラウドファンディングを運営する会社(ミュージックセキュリティーズ株式会社)では非常に貴重な経験を積むことができました。
ここでは、主に2つの仕事をしました。
1つは、音楽ファンド事業でインディーズレーベルの計数管理を担当しました。
個別原価計算、CVP分析などを駆使してCD毎の採算を試算。販売価格やプロモーション費用の意思決定資料を作成しました。
CDの販売は、契約関係が複雑なので、制作に係るすべてのコストを分解するシミュレーションシートを作成しました。チームメンバーが積極的にそのシート(私の名前に掛けて「ピロシート」と呼ばれていました)を使ってくれたのは嬉しかったですね。意外にも会計士受験で培った管理会計・会社法の知識をフル活用することができました。
2つ目は、一般的なファンド組成業務です。具体的には、ファンドの収益モデル・分配モデルの構築を担当しました。リスクとリターンの関係を考えながら金融商品を設計するのです。公認会計士は管理サイドで働くことが多くなりがちですが、運営サイドで仕事ができたことが大きな財産となりました。
独立後の話になりますが、日本初の株式投資型クラウドファンディングサービス「FUNDINNO」を立ち上げた株式会社日本クラウドキャピタル(JCC)の創業者と出会いました。創業時から関与するとともに2017年 からJCCの取締役に就任し、CFOとして財務戦略の立案に携わっています。
また、新事業での会計士の業務にも深く関わる経営管理クラウドサービスの「FUNDOOR」の担当取締役として事業創出するとともに、JCC全体の経営戦略の実行や計数管理を実施する経営企画室長も兼務しています。
32歳で株式会社アクリアを設立
32歳になった2011年、株式会社アクリアを立ち上げます。
「立ち上げ」と言っても、独立しようと以前から思っていたこともなければ、この当時「こんな会社にしたい」と大きな目的があったわけではありません。
当時は公認会計士の未就職問題の真っただ中でした。信頼できる知人から「論文式試験合格者を対象に研修を実施して、彼らに活躍の場を提供できないか?」という提案を受けました。インターンの発想ですね。
だったら、ついでに事業会社やベンチャー企業を対象に経理コンサルティングも提供できないか?といった話になったのがきっかけです。
長らくフリーランスの会計士として働いていましたので、会社を設立したものの「ついに独立した」という気持ちは全く感じなかったですね。
個人事業主がチームになって働く。ただ、それだけの変化です。
個人で働いていた時は、正直「採算度外視」で仕事を引き受けることも多々ありました。「売上」よりも「人脈」と「経験」を求めていたからです。加えて、複数の仕事をしていたのでリスクを背負えたのかもしれません。
一方、会社でやっていこう!となると、個人だけで受注案件の意思決定はできなくなります。いままでは「大丈夫」と思っていたものも「なぜ大丈夫なのか」「それをやる意味がどこにあるのか?」ということをメンバーに説明しなくてはなりません。
逆に、メンバーが受注した仕事に携わることも増えていきます。そうすると自分が慣れていない分野の業務にも対応せざるを得ません。
営業も含めて未経験の業務の連続でした。とにかくその頃は自信がなかったです(笑)。
正直、独立して2年間くらいは、アクリアは何をしている会社か説明できませんでしたよ。
「何かをやってやろう」ありきではなくて、個人事業主が「足りない部分を相互補完しながら成長する」ための会社設立だったのかもしれません。チームで働くことで、成長や充実を共有ができますからね。
あとは・・・一人だと意識しないうちにさぼってしまって成長が止まってしまう気がしていました。
意識の高い人に囲まれると必然的に成長が求められますし刺激を受けます。常にブラッシュアップしていなければなりません。
対等な立場を大切にするアクリア
私たち会計プロフェッショナルの仕事は、事業をつくっているわけではなく、サービス・体験をお客様に提供するビジネスだと思っています。そういう意味では、お客様に対する電話やメールの「感じの良さ」「相手のテンポに合わせたスピード感」といったことがとても大切だったりします。
UX(ユーザー・エクスペリエンス)、CX(カスタマー・エクスペリエンス)という言葉が当てはまると思うのですが、お客様は「わかりやすい」「親しみやすい」といった体験を重視されます。そして、お客様の期待を超えることで長期的な信頼関係が生まれます。
メンバーは、社外の専門家でありながら「社内の人」のように働いています。
「〇〇さん、来週飲みに行きませんか?」
「うちの経理部門の歓送迎会に参加してもらえませんか?」
というような言葉をいただくこともあります。
私は、長期的な人間関係を大切にしています。
それは、アクリアのメンバーに対しても同様です。アクリアは効率的な組織づくりをしていません。
例えば「IPO支援」にドメインを絞り込んで、IPOスペシャリストを集めて専門業務に特化することは、効率的な経営かもしれませんが、うちはまったく逆。お客様は上場会社から上場準備会社、オーナー企業まで多岐に渡ります。
また、アクリアには人事部や研修専門チームが存在しません。メンバーが必要と思うものを自主的に共有しています。何でも与えるのではなく、現場で学ぶチャンスを重視しています。
アクリアで働く会計士・税理士は、将来的に独立する人もいるでしょうし、海外で仕事をはじめる人も出てくると思っています。それでも、信頼関係がつながっていればいずれまた一緒に仕事ができる。そんな対等な関係が理想です。
意志ある人が輝く社会に
お話してきたとおり私は若い頃、会計士としてプロフェッショナルに仕事ができているのだろうかと常に不安と焦りを抱えていました。
その度に多くの先輩方に機会を与えていただき、経験を積むとその分野に関して少し自信が生まれ、また次の機会に向かうことができたことを覚えています。
不安と焦りを先輩の助けにより小さな経験と自信に変える事を続けた若手時代ですが、現在、会社側の支援をするようになると、会計士の発揮できる価値や活躍できる領域にとてつもない可能性を感じています。
会計士集団の中にいるとなかなか気づきませんが、試験勉強及び実務経験で培う知識・経験がクライアントの経営に関する様々な領域で求められています。
会計士業界は、行動すれば先輩方の生きた経験と得られた自信を惜しみなく教えて頂ける機会に出会えます。
アクリアのビジョンは「意志ある人が輝く社会に」です。若手であったとしても意志をもって行動すればそれを補完するプロフェッショナル層と助け合うことでお互いに輝くことができます。
また、アクリアでは以下の5つのバリューを掲げています。
Plus one more(期待を超える)
On your side(良きパートナーとして寄り添おう)
Enjoy the difference(違いを楽しもう)
Praise the challenge(挑戦を讃えよう)
Follow your passion(情熱に従おう)
期待を超える仕事をするために、メンバーと助け合い支え合う味方となり、自分にないものをリスペクトし自分にあるものを分かち合う。挑戦するメンバーを讃えチームで支える環境の中で一番好きな仕事をしよう。
若手時代に先輩方に教えて頂いた会計士の可能性、行動すれば得られる機会をアクリアでは大事にしています。これからの会計士業界は機会で溢れています。様々なキャリアが生まれ、機会に溢れる世界を是非楽しんでください!
プロフィール
トップランナー 公認会計士 vol.1
平石 智紀 Tomoki Hiraishi
公認会計士、税理士
2001年慶應義塾大学経済学部卒業。07年公認会計士登録。14年税理士登録。新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)などを経て、現在、株式会社アクリア代表取締役、税理士法人アクリア代表社員、株式会社日本クラウドキャピタル取締役、株式会社インタートレード(東証2部)非常勤取締役。個人事業主時代にプロフェショナルファームで実務経験を積む傍ら、投資型クラウドファンディングの事業立ち上げ及び会計分野の若年層教育に長く携わった実績を踏まえ、成長型変革型のオーナー企業・ベンチャー企業の支援を会計税務財務一体型で支援するプロフェショナルファーム(アクリア)と次世代型金融株式投資型クラウドファンディングFundinno(日本クラウドキャピタル)を展開し、20代~40代の次世代を担う会計士税理士がIT技術を駆使して経営者の一員としての機能を発揮することを志向している。日本公認会計士協会東京実務補習所運営副委員(2015年~18年)、北陸大学非常勤講師(11年~14年)、帝京大学経済学研究科指導教員(19年)。著書に『レクチャー財務諸表論』(中央経済社、共著)など。
会社情報
- 株式会社アクリア
- http://www.accrea.co.jp
上場会社に特化した会計コンサルティングファーム。
- 所在地
- 東京都渋谷区代々木3-23-4 VORT西新宿Ⅱ 2階
- 設立
- 2011年7月設立
- 従業員数
- 公認会計士30名、公認会計士協会準会員16名、税理士16名(うち、公認会計士同時登録10名)、税理士科目合格者2名、コンサルタント6名が在籍(非常勤含む)
- 代表取締役
- 川崎勝之(公認会計士/税理士)
平石智紀(公認会計士/税理士)
- 事業内容
- 決算・日常業務改善支援、管理体制構築支援、買収後のPMI業務、IPOアドバイザリーサービス、適時開示サポートサービスM&Aアドバイザリーサービス(財務デューデリジェンス,企業価値評価,ディール実行支援)、教育・研修事業各種税務サービス(税務顧問、税務コンサルティング等)、経理業務効率化・体制整備サポートサービス、事業承継サポートサービス
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