IPOの専門家として
企業の成長をサポートする会計士
あずさ監査法人のIPO部門でキャリアをスタート
幼少期の私は、大手企業に勤める「転勤族」の父の背中を見て育ちました。ある日、会社のリストラ担当となった父の険しい表情を目の当たりにします。私は「大企業で働くサラリーマンの厳しさ」のようなものを実感し、将来は「起業」か「士業」の二択を考えるようになりました。しかし、起業家として茨の道を進む勇気はなく、また、大学の学部が商学部であったということもあり、気づけば「公認会計士」を志していました。
論文式試験に合格した2004年にあずさ監査法人へ入社。IPO部門への配属となりました。学生時代から「これから成長期を向かえる中小・ベンチャー企業を支援したい」と考えていた私は、入社前からIPO部門への配属を希望していました。当時の私は「監査法人に10年程度務めてから転職または独立する」というイメージを抱いていましたが、あずさ監査法人に12年間在籍することになります。
監査法人ではIPO業務にとどまらず、メーカー・商社・ITなど幅広い業種の監査を経験しましたし、財務DD(デューデリジェンス)にも携わることができました。インチャージ時代は10社以上を担当し、終電間際に帰宅する毎日。土日出勤も珍しくありませんでした。「働き方改革」という言葉がなかった当時の会計士は、本当に良く働いていたと思います。本給よりも残業代が高額となる若手会計士も珍しくなかった時代です。働きすぎは決して良くありませんが、個人的には、この「修行時代」に会計士としての基礎力を身に着けることができたと感じています。
IPO支援業務の魅力
会社が株式を証券取引所に上場するためには、監査法人による上場直前2期間の会計監査を受ける必要があります。とはいえ、全ての会社が監査法人からの監査を受けられるわけではなく、会社が監査契約を締結するに足る条件を備えているか、まずは監査法人が会社を調査(予備調査)することになります。監査を受ける前の非上場会社の会計処理は税務会計を前提としていることが殆どであるため、蓋を開けてみると(上場会社水準の会計基準を適用してみると)実は債務超過であったなどということも珍しくありません。
この予備調査の段階で上場へのハードルを実感し、社長が上場を断念してしまうケースも多くあります。
また、非上場会社は内部管理体制も未整備であることが多いため、監査契約を締結して監査を開始した後は、通常の監査や会計処理の修正だけでなく、内部管理体制の一から構築のお手伝いを並行して行っていくことなります。
IPO業務の一番の魅力は、この未成熟な会社が成熟していく過程を共に体感して、成長と成功の喜びを共有できることだと思います。
大手証券会社への出向で「ビジネスの世界」を知る
2012年に野村證券株式会社の審査部門へ出向しました。2年間の出向期間で「ビジネスパーソンとしての視野」を広げることができました。監査法人は会計士の集団ですので、一般的な株式会社とは若干雰囲気が異なります。当時の私は「監査法人しか知らない自分」に対して、ある種のコンプレックスを感じていました。ですが、証券会社で2年間汗を流したことで、その不安を払拭することができました。
実際に出向してみると、新しい発見の連続でした。「組織を統制する仕組み」や「スピード感」が監査法人とはまるで違いました。私が出向した2012年は、安倍政権による「アベノミクス」元年。低迷していた株価の上昇がスタートし、IPO市場も活況を取り戻しました。また、リーマンショック後の当時、証券会社は採用活動に消極的でした。マンパワー不足の審査部は、忙殺されることになるのです。しかし、上司は「私の限界」を理解しており、ギリギリのところまでいくと必ずフォローしてくれました。また、世間から体育会系と言われる独特な企業文化を体感することもできました。出向先で尊敬できる上司に巡り合えたことは大きな財産の1つです。
監査法人(監査)、証券会社(審査)の両サイドでIPOに携われたことは私の大きな強みとなりました。監査法人では会計や内部統制を中心として上場の際に求められるものを学ぶことができましたが、証券会社ではより広く、上場会社に求められる内部管理体制や資本市場への対応などについて、得難い知識を得ることができました。
独立後、ゼロベースで上場支援に携わる
「監査サイド」「主幹事証券会社サイド」の立場を経験した私ですが、独立前に「会社サイド」の立場も経験するべきかどうか悩みました。私は、独立志向でありながらも、とても臆病な性格なのです。しかし、企業のサイズを問わず「会社は実際に入社してみないと分からない」という怖さがありました。仮に、会計士としての「最終目的地」が会社組織になるのであれば「独立開業して関与した会社に対して、この会社ならフルコミットしても大丈夫!」と思った時点で転職すれば良いのかなと考え、2016年に独立開業しました。
IPO畑を歩んできた私の強みは、やはりIPOです。お陰様で常時5社程度のIPO案件を抱えています。独立後の実績事例としては、教育関連企業A社の上場支援案件があります。株式上場準備にゼロベースから携わり、無事にA社の上場を果たすことができました。A社の売上高は、20億円から100億円まで成長し、従業員数は1000人を超えました。現在は、監査役の立場でA社の支援を継続しています。
IPOの特徴はお客様とのお付き合いが長いことです。上場するためには、最低でも3年はかかります。そして、上場後もお客様との関係は継続します。そういう意味でIPOはストックビジネスに近いと言えるかもしれません。これに対して、J-SOX対応やM&A関連などのスポット案件は、フロービジネスです。農耕民族タイプの私は、ストックビジネスが性に合っているのかもしれません。
私が所属するAND B ACCOUNTING FIRMは、株式会社アンドビーが運営する会計コンサルティングファームです。AND B(アンドビー)は、あずさ監査法人時代からの会計士仲間が立ち上げました。専門分野をもった独立会計士が約30人在籍している組織です。建築現場では、大工・左官・塗装など異なる分野の職人が仕事をしているように、AND Bには、M&Aのスペシャリストもいれば、公会計のスペシャリストもいます。会計分野の「一人親方」が集まって、それぞれの得意分野を通じて仕事をシェアリングしているイメージです。
若手会計士は「目の前の仕事に全力投球」すべし
私は、職業人として常に「不安」につきまとわれます。なぜなら、過去に習得した知識はすぐに劣化してしまうからです。会計ルールや経営トレンドは目まぐるしく変化します。プロの会計士としてお客様に高品質なサービスを提供するためには、常に知識をブラッシュアップしなければいけません。座学だけでは不十分です。現場で活用して、はじめて「生きた知識」となります。会計士としての「成長曲線」をキープするためには、「ハァハァ」と全速力で走ったあとのような感覚を持ち続けることが必要だと感じています。そのためには、常に謙虚な姿勢を保たなければなりません。
将来的には、よりスタートアップ企業の支援に携わりたいと思っています。創業者も社員も支援側も全員が「成長するぞ!」というピュアな気持ちで一丸となり、わくわくするような仕事を増やしていきたいです。異なる経営ステージのお客様と接することで、仕事にストーリー性を持たせていきたいのです。
最後に、若手の会計士の皆様に1つアドバイスがあるとすれば「目の前の仕事に全力投球すること」です。あなたの仕事は必ず誰かが見ています。会計士業界は広いようで非常に狭く、良い噂も悪い噂もすぐに広がります。監査法人の内外を問わず、会計士の仕事は「紹介」や「推薦」でいただくことがほとんどです。善因善果。良い仕事をすれば、必ず良い仕事が巡ってくるはずですよ。
プロフィール
トップランナー 公認会計士 vol.5
金井 重高 Shigetaka Kanai
1979年東京生まれ・埼玉育ち。県立浦和高校から早稲田大学商学部へ進学後、公認会計士を志す。2004年にあずさ監査法人へ入社後、IPO部門で12年間監査業務に従事する。2016年に独立開業し、IPOコンサルを中心に幅広い業種のクライアントを持つ。趣味は学生時代から続けているストリートダンス。
And B Accounting Firm
https://andb.co.jp/
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