管理部門から経営全体を
マネジメントする公認会計士
西尾 侑騎さん
専門学校の学費をアルバイトで稼ぐ
福岡生まれ和歌山育ちの私は母子家庭で育ちました。経済的にゆとりがなかったため、高校時代は毎日のように近所のスーパーでアルバイトをしていました。正直なところ、高校時代はアルバイトの思い出しかありません。国公立の大学への進学を考えていた私ですが、大学受験に失敗。母の負担を考えると浪人の選択肢はありませんでした。ちょうどその時、和歌山に専門学校が開校したのです。大学に進学しないのであれば「何か資格を取得するのも良いのでは」と思い「高卒でも挑戦できる資格はありますか?」と専門学校で相談したところ、公認会計士をお勧めされたのです。恥ずかしながら、この時初めて「会計士」という資格を知りました。「大学受験に失敗した分、最難関の資格に挑戦してやろう!」と、私はすぐに会計士を志すことを決めました。ですが、専門学校に通学するための資金が足りません。私は専門学校の学費を稼ぐためにアルバイト生活を再開せざるを得ませんでした。
就職大氷河期に直面し事業会社へ就職
論文式試験に合格したのは2011年です。しかし、当時は就職大氷河期。多くの合格者が監査法人に入社できないという非常事態です。私を採用してくれる監査法人は、残念ながらありませんでした。加えて、当時21歳だった私は新卒求人サイトの登録対象者にも該当しません。「どうやって就職すれば・・・」と路頭に迷いました。そんな時、公認会計士協会の準会員会で知り合った先輩から「会計士の試験合格者を採用してくれる会社がある」と声をかけられます。貴重なご縁に恵まれた私は、2012年にJASDAQ上場(現東証プライム上場)のサムティ株式会社へ入社。経理部で連結やキャッシュフローを担当しつつ、決算短信や有価証券報告書の作成、EDINET登録といったIR業務、監査法人対応や株主総会の準備まで、かなり幅広い業務を経験することができました。特に連結会計では、買収時に発生する利益額の算出を一任してもらい、その算出結果を元に実際に取引が実施され、有価証券報告書に想定した通りの数値が載る結果となりました。
入社2年目から大学院へ通学し新たなキャリアを模索
私は、入社2年目に大学院(同志社大学大学院ビジネス研究科)へ進学します。働きながら平日夜2日、土曜に通学しました。高卒のコンプレックスもあったのですが、会計士の先輩からも「長期的なキャリアを考えると学歴があったほうが良い」とストレートに言われたことが直接的なきっかけです。大学院に進学してよかったと思うのは、異業種の人脈を形成できたこと。先日も大手IT企業のMA担当者、アニメーション会社の管理職と顔を合わせたばかりです。
サムティに入社して3年が経過した頃、上司から「来年の決算も一緒にできる?」と言われました。当時の上司は私の良き理解者で、何となく私が転職を考えていることに感づいたのでしょう。上場企業にて経理や開示業務に携われたので、次のキャリアステージとしてはその前進となる上場準備会社を視野に入れていました。会社が成長しその先の上場に繋がる道を自分も一緒に体験したいと感じていたからです。その旨を上司に伝えて、上司とは泣きながらお別れしました。
仕事の取組の変化
上場企業で3年の経験を経て、私は2015年にDIYや、ものづくりに必要なハンドツール及び電動工具をネット販売している株式会社大都へ転職しました。転職を決めた面接時のやり取りを思い出すと、面接時に、大変そうですが楽しいですか?という質問をした際に、即答で楽しいです!と返ってきたので、じゃあ行きます!といった、やり取りでした。
1社との違いと言えば、服装がスーツから私服に、呼び方が名称からイングリッシュネーム(自分が決めたあだ名)に、階層が縦からフラットに、上げたらキリが無いですが、180°に近いほどの環境の変化でした。仕事があちこちに転がっており、受け身では無く能動的な姿勢が求められました。仕事が、効率化されたルーティンをミス無くこなしていくというものから、整理整頓などされておらず、何をどうすれば効率的かつ適切な数値がとれるかを、自ら考える必要がありました。
今では当たり前なことも、あの頃は新鮮に感じました。また2社目においては、1社ではできなかった予算策定について携わることになりました。実績という、過去と現在の数値を参考にしつつ、今後の戦略に合わせた将来の数値を作っていくことの面白さを感じました。もちろん、作りっぱなしではなく、その進捗がどういう状況かを確認していき、ズレが発生した場合は、どのような手を打てるかを検討していくことの重要さも再認識しました。
エージェント会社経由で3つ目の職場へ転職
2018年8月、私は株式会社Lcode(エルコード)へ転職しました。入社後はCFOの下、売上や在庫の数字を固めて監査に対応しうる環境を整備していきました。当初は在庫の評価方法すら定まっていなかったため、2社目同様にゼロベースで内部統制の整備を進めました。こちらについては前職での経験を活かしつつ進めていけることができました。
会計周りが少し落ち着いたあとは、在庫発注のやり方を再構築したり、管理会計数値の集計方法の整備、規程の制定と運用や内部統制の3点セットを準備し、そのまま内部監査も担当しました。特に内部監査は、自分で調べたり外部のサポート会社の力も借りたりして、ブラッシュアップを何度も重ねて、少しずつ形にしていきました。
コンプライアンス遵守や規程の運用状況の確認といった監査方針の作成や、監査対象毎のチェックリストの設定、監査を実施し改善すべき点は改善指示書を提示しながら改善を行い、その後フォロー監査を行って問題の無いことを確認し、内部監査報告書を提出する。この一連の流れを経験することができました。
業務の流れや、システム周りを一通り把握したためか、社内にて質問や相談を受ける立場にもなりました。自ら考え判断して答えることが増えたことは良い機会になったと思います。
時々、経営層から突発的に欲しい数値を依頼されて対応しますが「なるほどこの視点から考えるのか!」と勉強になります。やはりデータを扱っていると、ついつい近視眼的にまたデータ有りきで考えてしまうこともありますが、そうでは無く俯瞰的にものごとを捉えて、データを活用していかないといけないなと痛感します。
私のキャリアは、会計からスタートしたものの、今は会計に限らず幅広く業務に携わっております。はじめて担当する仕事も達成すべき目的を明確に把握し、その目的の達成の妨げとなる壁をどのようすれば無くしていけるかを考え、行動に移すようにしています。起きている事象に1つずつ対応しているとキリが無いため、原因となる本質を見抜き、対応していこうと意識しています。言葉では簡単に言ってしまいますが、私自身意識して取り組まないとまだまだ甘い点もあるので、日々成長していかないといけないなと思っています。
プロフィール
トップランナー 公認会計士 vol.16
西尾 侑騎 Yuki Nishio
1991年生まれ。
2011年に公認会計士試験(論文式)合格。
2012年にサムティ株式会社に入社。経理部に所属し、月次決算や開示業務に従事。
2016年に同志社大学大学院ビジネス研究科卒業。株式会社大都に入社し、経理業務全般と予算関連に従事。
2018年より株式会社Lcodeに入社し、会計や在庫管理、内部監査など幅広く業務に携わる。
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