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税理士が求められる業界とは?
~税理士法人~

税理士法人とは、「税理士業務を組織的に行うことを目的として、複数の税理士が共同して設立した法人」のことです。少なくとも2人以上の税理士が常に社員として所属しなければなりません。また、税理士法人の社員は全員が税理士でなければならず、さらに社員は全員が法人の社長で、法人の代表権を持ち、活動の結果について無限に責任を負わなければなりません。しかし、法人化することで組織として活動することができるため、業務提供の安定性や継続性、より高度な業務への信頼性を確保することができるようになりました。
2002年の税理士法改正から、税理士法人の設立は進んでおり、令和7年3月末時点で、税理士法人は全国で5,146社存在しています。(注)会計事務所と税理士法人を合わせた企業数は全国で30,000以上であり、約1/6が税理士法人として活動しているのです。
(注)参考URL:https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/rengokai/rengou.htm

税理士業界において、税理士法人はその事業規模によって、大手、準大手、中堅、中小規模と類別される傾向にあります。また、大手の中でも特に業界を代表する4大法人はBIG4税理士法人と呼ばれています。
下の図では、弊社発行の『会計人のための就職ガイド 2025 summer』に掲載されている従業員数上位10法人をまとめました。BIG4税理士法人などの業界を代表する大手税理士法人を中心に上位にランクインしていることがわかります。さらに、従業員数が500人を超えるような法人は数えられるほどしかありません。業界全体でみても、従業員数500人以上の法人は10法人程度しかないのです。

年齢分布について※2025年7月4日発行 『会計人のための就職ガイド 2025 summer』参照

今回は、業界を牽引するBIG4、そして国内大手の税理士法人を中心に、税理士業界の状況を見ていきます。

BIG4税理士法人

BIG4税理士法人とは、「BIG4」と呼ばれる世界規模で活躍する4大会計法人のメンバーファームで、税務領域における国内メンバーファームの総称です。税理士を目指す人は誰しもが一度は耳にしたことがあると思います。具体的には、「PwC税理士法人、EY税理士法人、KPMG税理士法人、デロイト トーマツ税理士法人」のことを指し、世界150ヶ国・地域にわたるグローバルネットワークを背景に、国内外の税務サービス、M&A、経営支援などを幅広く手掛けています。クライアント層は大手上場会社、上場関連会社、外資系企業が中心です。大型の案件に携わることが多く、新聞や業界誌に掲載されるような誰もが聞いたことはある有名な企業の企業再生、組織再編などを担当する事例もあります。

特に、BIG4の大きな特徴である「国際税務」では、その広大なグローバルネットワークを駆使し、各国のメンバーファームと連携を協力しながら様々なサービスを展開しています。例えば、国内企業の海外進出などに関するアウトバウンド税務や海外企業の日本進出などに関するインバウンド税務、移転価格税制やタックスヘイブン対策税制などが挙げられます。世界経済の複雑化や国際的な税制改革が進む現在、上場企業や外資系企業をクライアントとするBIG4税理士法人は、国境をまたぐ税制や組織再編などに対応できる高度な専門性が求められているのです。

日々の業務も、記帳代行や決算業務といった定型業務はほぼなく、税務申告業務やレビュー業務、コンサルティング業務が中心となっています。上場企業や外資系企業の税務業務を担当することから、一般的な会計事務所ではあまり扱わないような難しい論点や特殊な論点などに関する専門性の高い業務を経験することができます。高度で大型の税務案件に対応するため、繁忙期は休日出勤も行うほど多忙を極めますが、BIG4だからこそ得られる実務経験は大きな魅力といえます。ただし、分野に合わせて部門が細かく分かれている傾向にあり、実務経験が担当する分野に特化してしまうという側面もあります。より高度な税務知識と経験を積むことができますが、税務全般を経験したい人、特に将来的な独立開業を考える人はBIG4だけではなく、また別のキャリアステップを踏む必要があるでしょう。

このように高度で大型の税務案件を取り扱うBIG4税理士法人は、市場へ大きな影響力を持つとともに、提供するサービスにおいても高い評価を得ています。そのため、給与水準も一般的な税理士法人と比べて高水準であるといわれており、実績や役職によっては年収1,000万円以上も夢ではありません。
税理士を目指す人の中で、BIG4で活躍したいけど、入社するためには語学力が必要なのではと不安を感じる方もいるのではないでしょうか。実は、入社に際し、高い語学力はあまり重要ではありません。BIG4税理士法人はグローバルな人材の育成にも力を入れており、英会話など語学研修をはじめ、語学力を伸ばすことができる環境を整えているためです。また、各国の税務の知見を広げることを目的とした中長期的な海外研修や海外のメンバーファームへの異動・出向なども行われています。そのため、入社時は英語が得意でなくとも研修を経て海外で活躍されている方も多く、国際的な舞台で活躍したい人にとっては魅力的な環境であるといえます。

BIG4税理士法人は広大なグローバルネットワークと高い専門性から、社会的に影響力のある大型案件や国際的な案件などBIG4ならではの経験を積むことができます。BIG4で働くことは、その後の税理士としてのキャリアにおいても大きな強みとなるため、税理士として働く方にとって、魅力的なキャリアフィールドといえるでしょう。

【PwC税理士法人】
2002年に設立されたメンバーファームです。税理士・公認会計士を中心に約800名が在籍しており、国内5拠点(東京2拠点、大阪、名古屋、福岡)にて活動しています。DX領域にも注力しており、IT/システム導入経験者なども積極的に採用し、全社員の約3割がDX人材として在籍。

【EY税理士法人】
EY税理士法人は、2002年に設立された日本のEYメンバーファームです。国内5拠点(東京、大阪、名古屋、福岡、沖縄)にて活動し、税務コンプライアンス、M&Aや組織再編、国際税務などに関する税務サービスを提供しています。BIG4では唯一沖縄に事務所を設けており、税務コンプライアンスや人材戦略支援に特化してサービスを展開しています。

【KPMG税理士法人】
2004年に設立され、国内6拠点(東京、大阪、名古屋、京都、広島、福岡)に展開。国際税務分野を事業の軸のひとつに据え、海外進出支援やM&A、移転価格税制、BEPS対応などのサービスを提供しています。クライアント比率は国内企業が約6割、外資系企業は約4割であり、グローバルネットワークや国際税務のノウハウを活用し国内外のクライアントのニーズに対応しています。

【デロイト トーマツ税理士法人】
2002年に設立され、広大なグローバルネットワークを背景に、税務コンプライアンス、組織再編やM&A、国際税務などのサービスを展開しています。また、BIG4では唯一日本の会計事務所を起源に持ち、業界ではトップクラスの国内18拠点を設け、上場企業・外資系企業の税務だけでなく、中堅・中小企業を対象とした地域密着型の税務サービスも提供されています。

国内大手・準大手税理士法人

大手・準大手税理士法人は、一般的にはBIG4税理士法人に次ぐ事業規模を有する税理士法人のことを指します。その多くが総合型の税理士法人であり、大きく分けると、国際会計事務所ネットワークに属さず日本国内で発足した独立系、外国資本が主な出資者である外資系に分けられます。例えば、前者は辻󠄀・本郷 税理士法人や税理士法人 山田&パートナーズが挙げられ、後者は太陽グランドソントン税理士法人が挙げられます。

大手・準大手の主なクライアント層は上場会社や上場関連会社です。ただし、BIG4と比較すると取り扱うクライアント規模はやや小規模といえます。事業内容は、税務申告や顧問業務など税務コンプライアンスに加え、M&Aや組織再編、国際税務など幅広い領域でサービスを展開しています。国際税務分野では、BIG4に次ぐ事業規模やグローバルネットワークを背景に、国際間取引に関する税務対応や海外進出支援などを行っています。一方で、中堅・中小企業や特殊法人、企業オーナーや富裕層にも対応し、事業承継や資産税などの分野において事業を展開する法人も多く、税務のみならず経営や資産全般にわたるアドバイザーという側面も持っています。

業界有数の事業規模であるため、事業領域ごとに部門を分ける組織体制を整えている法人が多いです。そのため、クライアントのあらゆるニーズに応じたサービスを提供できる点は特徴といえます。中には資産税やM&Aといった特定分野の専門チームを設け、高い専門性やノウハウを背景に、高水準なサービスを提供している法人もあります。部門ごとに案件を担当するケースが多いですが、部門間の異動制度や、一部業務については所属とは異なる部門の案件にアサインしてもらえることなど従業員の希望に合わせて比較的柔軟に業務調整を行う法人も多く、税理士として幅広い経験ができる機会となっています。

大手税理士法人の業務の中心は、税務コンプライアンス業務(主に法人税や消費税など)と、M&Aや事業承継、企業・事業再生などに関連するコンサルティング業務です。通常は一つの案件に対し一人のスタッフが担当することが多いですが、大型案件では複数名のチームで対応し、業務を分担して行うこともあります。また、記帳代行や資料作成など基礎的な業務を若手が担い、キャリア形成の土台として経験を積むことも少なくありません。業務を行う上で、上場企業やその関連会社の税務案件や高度な税務分野に対応できる高い専門性が求められます。

このように大手・準大手税理士法人では、上場企業や外資系企業の税務に加え、資産税や事業承継といった案件を取り扱っています。これら様々な業務経験を通じて、税務・会計・財務を多面的に学び、総合的なスキルを身につけられる環境は、就職・転職を考える方にとって大きな魅力といえるでしょう。
また、新入社員研修や実務者研修といったキャリアに応じた研修制度など大手ならではの充実した教育制度があり、社員の成長を支える環境が整っていることも魅力の一つです。

税理士業界において、「大手」「準大手」の明確な区分基準はありませんが、一般的に以下の税理士法人が「大手」または「準大手」と考えられています。

国内大手税理士法人

辻・本郷 税理士法人
税理士法人 山田&パートナーズ

準大手税理士法人

太陽グラントソントン税理士法人
クリフィックス税理士法人
税理士法人AGS/株式会社AGSコンサルティング
あいわ税理士法人
アクタス税理士法人
アタックス税理士法人
TOMA税理士法人/TOMAコンサルタンツグループ など

分野特化型税理士法人

税理士法人の中には、特定の分野に対して大きく強みをもつ、分野特化型の税理士法人があります。例えば、資産税分野です。この分野は主に相続税や贈与税などに関わる税務領域を指し、社会の高齢化や法改正に伴いニーズが増加している分野です。主な業務として、相続税などの申告業務や生前の節税対策コンサルティング業務が挙げられます。クライアントは個人資産家やオーナー企業を相手に仕事を行う機会が多いです。そのため、クライアントの要望や状況に応じた最適な税金対策を提案するため、密にヒアリングを行い、信頼関係を構築できるコミュニケーション能力が重要とされています。

資産税業務特化

ランドマーク税理士法人
MACミッドランド税理士法人 など

また、SPC(Special Purpose Company)分野に強みを持つ税理士法人もあります。SPCとは資産流動化や資金調達のみを目的に設立・運営される法人のことです。不動産投資やM&Aにおいて広く活用されており、これに対し、スキームの策定に関するアドバイザリー業務や、ビークルの組成から清算までにおける税務会計サービスを行っています。高度な税務会計知識に加え、金融や法務との連携も不可欠なため、専門性の高さが特徴です。

SPC関連業務特化

青山綜合会計事務所
東京共同会計事務所 など

その他、業界・業種のターゲットを絞りそれに特化した法人もあり、医療系や、音楽業界やエンタメ業界、IT業、建設業、農業といったものも見受けられます。分野特化型の税理士法人は、その分野における特有の課題やニーズを的確に把握し、そこに応えるサービスを重点的に提供でき、そして分野特有の論点やノウハウ(会計・税務処理や各種規制)を押さえたサービスを提供することもできます。

キャリア形成について

税理士としてキャリアを形成していくうえで、どのような税理士法人で働くのかは非常に重要なポイントです。法人の規模や事業領域により、得られる経験やスキルが異なるためです。

例えば、BIG4に入社した場合、アソシエイトからキャリアをスタートし、その後上場会社や外資系企業などを相手にコンサルティング業務を行います。大企業に対し、税務リスクアドバイザリー、国際税務やM&Aなどといった高度で複雑な税務サービスを経験できるため、専門性を高めていくことができます。

一方で、大手・準大手国内税理士法人は、上場企業のみならず、中小企業や個人事業主など幅広いクライアントに対応します。法人税や消費税などの税務申告や顧問業務に加え、事業承継や組織再編などの案件にも携わることができ、総合的な経験を積むことができます。
また、分野特化型の税理士法人においては、特定分野に関わる機会が多いため、その道のスペシャリストとして専門性を高めることができます。

税理士としての進路先の選択は、今後のキャリア形成に大きな影響を与えるので、ご自身が将来どういう税理士として歩んでいきたいかを考えて就職先を決めることが大切です。

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